2017年5月11日から5月20日の間に、文庫で刊行される時代小説の新刊情報リスト「2017年5月の新刊 中」を掲載しました。
今回注目するのは、集英社文庫です。
帚木蓬生(ははきぎほうせい)さんの『天に星 地に花 上』、『天に星 地に花 下』は、久留米藩領井上村を舞台に、苦難の世に慈愛を施す医師の感動の物語です。
久留米藩領井上村。大庄屋高松家の総領・甚八と弟の庄十郎は父に連れられ、数千と集まる百姓たちの姿を目の当たりにする。突然下った年貢の増徴と夫役。百姓たちの怒りに火がついたのだ。天地を揺るがすような一揆寸前、稲次因幡家老が百姓救済を申し出て、一揆は回避されるが……。
時が経ち、甚八は家督を継ぎ、庄十郎は自らの病をきっかけに医師の道を志す。
「天に星、地に花、人に慈愛」の章句を胸に、命の恩人である医師鎮水に師事し、医の道を進む庄十郎。
それは「天下の御百姓」と領内の百姓らに呼びかけた稲次家老と、鎮水とを結ぶ絆でもありました。
田植え、雨乞い、火祭、稲刈り、飢餓、筑後平野に息づく、人々の営みを叙情豊かに描かれています。
心を洗われるような清々しい気持ちを味わいたいと思います。
葉室麟さんの文庫最新刊『緋の天空』は、奈良時代に大仏建立を目指した、光明皇后を描く歴史長編です。
新鮮な題材で大いに興味が惹かれます。
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『天に星 地に花 上』
『天に星 地に花 下』
『緋の天空』