髙田郁(たかだかおる)さんの文庫書き下ろし時代小説、『あきない世傳(せいでん) 金と銀(二) 早瀬篇』が角川春樹事務所・時代小説文庫より刊行されました。大坂天満の呉服商「五鈴屋(いすずや)」に奉公する少女・幸(さち)を主人公に、その成長を描く「あきない世傳 金と銀」シリーズの2作目です。
十四歳の幸に、店主の四代目徳兵衛の後添いに、との話が持ち上がった。徳兵衛は放蕩三昧で、商才に富む次男の惣次は分家を宣言し五鈴屋は危機に瀕していた。番頭の治兵衛は幸に逃げ道を教える一方で、「幸は運命に翻弄される弱い女子とは違う。どないな運命でも切り拓いて勝ち進んでいく女子だす」と伝える。果たして、「鍋の底を磨き続ける女衆」として生きるのか、それとも「五鈴屋のご寮さん」となるのか……。
主人公の幸は、武庫郡津門村(つとむら)の学者の娘に生まれて、父の死後、縁あって大坂天満の呉服商「五鈴屋」に女衆として奉公しています。その聡さと口の固さ、そして商いへの関心の高さに、店の要石と称される知恵者の番頭・治兵衛が注目。
物語は元文三年(1738)の正月から始まります。放蕩三昧の末に、商いに身が入らず嫁を離縁した徳兵衛により、五鈴屋はその危機を乗り越えるために、店の後見人で徳兵衛の祖母の富久と治兵衛は、徳兵衛の後添いを迎えることを画策します。そして、なり手のいない後添いに白羽の矢が立ったのが、14歳の幸でした。
「物がさっぱり売れん、難儀な時代だす。生きるか死ぬか、商人たちが刀の代わりに算盤を交える戦国時代だすのや。無策では生き残ることは出来ん。けれど、幸やったら、知恵を武器にして商いの道を切り拓いていけるやろ。お前はんは、戦国武将になれる器だすのや」
(『あきない世傳 金と銀(二) 早瀬篇』P.74より)
大きな人生の転機を迎える幸から目が離せません。
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『あきない世傳 金と銀(二) 早瀬篇』