2016年7月1日から7月10日の間に、文庫で刊行される時代小説の新刊情報リスト「2016年7月の新刊 上」を掲載しました。
今回の新刊情報で注目しているのは、PHP文芸文庫。北原亞以子さんの『こはだの鮓(すし)』です。
誘惑に弱い男、不幸にしがみつく女――不器用な生き方しかできない者への温かい眼差しに溢れる時代小説短編集。表題作の「こはだの鮓」は、江戸の浅草が舞台。作兵衛は、鮓売りの与七に、こはだの鮓を分けてもらい、小躍りするのだが……。
本所を舞台に職人の日常を描いた「たき火」「泥鰌」は、著者の代表作である『深川澪通り木戸番小屋』など、市井人情ものの源流とも言える作品。
2013年3月に急逝した北原さんは、「深川澪通り木戸番小屋」や「慶次郎縁側日記」などの人気シリーズで知られますが、短編の名手でもありました。そんな著者の単行本未収録の作品集。幻のデビュー作「ママは知らなかったのよ」と、新選組関連著作の原点とも言える読み物も収録していて、ぜひ、読んでみたいと思っています。