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長崎出島に潜入した、女忍びの愛と葛藤を描く、傑作時代小説

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私が愛したサムライの娘鳴神響一(なるかみきょういち)さんの『私が愛したサムライの娘』が角川春樹事務所・時代小説文庫より刊行されました。

鳴神さんはこの作品で、第六回角川春樹小説賞を受賞してデビューし、第三回野村胡堂賞も受賞されています。スケールの大きな海洋時代小説にチャレンジした第2作『鬼船の城塞』も注目です。

徳川八代将軍吉宗と尾張藩主徳川宗春が暗闘を繰り広げる元文の世。尾張徳川家の甲賀同心組頭・左内は、幕府転覆を謀る宗春の願いを叶えるべく諜報活動に命を賭けていた。長崎出島に計略成就の鍵があると睨んだ左内は、愛弟子の女忍び・雪野を長崎の遊郭に太夫として潜入させる。そこで彼女は蘭館医師・ヘンドリックと出会う。忍びとして主の夢を叶えるために生きていた娘が、女として異国の男を愛してしまう……。

下総高岡藩の井上家の陣屋に潜入していたヒロインの女忍び・雪野の冒頭の活躍から、物語に引き込まれました。この作品を読むまで、現在の千葉県成田市にあった、下総高岡藩一万石の存在を知りませんでした(成田市に親戚が住んでいて土地勘が少しあったのですが…)。ちなみに、島原の乱で功を挙げ、キリシタンの取締りで知られる井上政重が藩祖です。

吉宗と宗春の水面下での対立、そこに蠢く忍びや剣客の活躍は、「闇仕事」というジャンルで、いろいろな作品を生み出しています。本作品は、独創的な点は、江戸や尾張を遠く離れた長崎に置いたことにあります。しかも、幕府と尾張の対立に、出島のオランダ商館を巻き込んだことで、物語がより魅力的になっています。

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『私が愛したサムライの娘』
『鬼船の城塞』(単行本)

高岡藩|ウィキペディア