2015年12月1日から12月10日の間に、文庫で刊行される時代小説の新刊情報リスト「2015年12月の新刊 上」を掲載しました。
今回の注目は文春文庫の新刊です。海洋時代小説の名作を多く残した、白石一郎さんの代表作の一つ、『海狼伝』が新装版で刊行されます。
戦国時代の終わり、対馬。松浦党の一族であった母とともに海と船へのあこがれを抱いて育った少年・笛太郎は、航海中、瀬戸内海を根城とする村上水軍の海賊衆に捕えられた。笛太郎は瀬戸内まで連行されるが、そこで自分が村上水軍の将の息子であることがわかり、海賊衆とともに行動する。その後笛太郎は織田信長の水軍との海戦に加わるなど力量を発揮、比類なき「海の狼(ウルフ)」へと成長していった……。
村上水軍を取り上げ、海に生きる男たちの夢とロマンを描いた海洋冒険時代小説の金字塔。第97回(昭和62年度上半期)直木賞受賞作。私を時代小説の豊饒な海に誘った、とても思い入れのある作品です。今、再読したい思いに駆られています。