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旗本の次男坊が武士を捨て、商家の入り婿に。千野隆司さんの傑作シリーズ

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入り婿侍商い帖 (三) 女房の声千野隆司さんの『入り婿侍商い帖 (三) 女房の声』は、『入り婿侍商い帖(一)』『入り婿侍商い帖 (二) 水運のゆくえ』に続く、シリーズ三作目です。

旗本の次男・早乙女角次郎は、舂米屋(つきごめや)の大黒屋の主人善兵衛に見込まれて、婿入りした。ところがライバル店の嫌がらせにも遭い、店の経営は芳しくなかった。下総・関宿藩の藩米横流し事件の解決を助太刀した角次郎に、関宿藩勘定奉行の朽木弁之助から極秘の探索依頼が持ち込まれる……。

子供のころに、下総・野田で育ち、隠居した祖父に米の良し悪しを教え込まれたというところがミソですが、角次郎は、入り婿してから、抜群の行動力と不屈の精神力で、次々に見舞われる危機を乗り越えて、小さな米屋を少しずつ大きくしていくところが痛快です。

「あなたは、いい婿さんですよ」
 おトクは、角次郎に慈しみの目を向けた。

 
新妻のお万季は幼い頃はおしゃべりな女の子だったが、ある事件をきっかけに言葉が出なくなり、話せなくなっていました。その妻と少しずつ心を通わせ、米屋を再興していくストーリーが感動的です。三巻目のタイトルには、そんな意味が込められていました。

時代考証を押さえながら、オリジナリティがあってエンターテインメントを兼ね備えた時代小説で定評のある作者の代表作の一つになる傑作シリーズです。

関宿藩久世家は、五万八千石ながら、利根川と江戸川が交わる水運の要所を押さえ、老中を輩出する名門。しかしながら、時代小説で描かれることは多くなく、その点からもこの作品は貴重です。

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『入り婿侍商い帖(一)』
『入り婿侍商い帖 (二) 水運のゆくえ』
『入り婿侍商い帖 (三) 女房の声』

→富士見書房|入り婿侍商い帖