『幕末万博騒動』|横山起也|角川文庫
2025年4月21日から4月30日に刊行予定の文庫新刊情報として、
「2025年4月下旬の新刊(文庫)」を公開いたしました。
今回特に注目したいのは、横山起也(よこやま・たつや)さんによる文庫書き下ろし時代小説『幕末万博騒動』(角川文庫)です。
2022年に『編み物ざむらい』で鮮烈に小説家デビューし、翌2023年には同作で第12回日本歴史時代作家協会賞文庫書き下ろし新人賞を受賞された著者の最新作となります。
あらすじ
17歳の青年・朝(あさ)は、米利堅(メリケン)人の通詞と日本人の遊女との間に生まれた子です。ひょんなことから蔵前の墨長屋敷に住み、常に洋装で過ごしています。ある日、口入屋から通詞の仕事を紹介され、品川宿を訪れた朝は、依頼主である仏蘭西の商人との会話のなかで、1867年に開催されるパリ万博に、江戸幕府だけでなく薩摩藩も出展するという噂を耳にします。国家でなければ参加できないはずの万博に、なぜ薩摩藩が……?
不審に思いながら長屋に戻った朝は、墨長屋敷に「一目連」という闇組織のパリ万博への関与を阻止せよ、という「仕組み」の依頼が届いていることを知ります。
出品物である「長益の茶碗」をめぐる騒動のなか、朝は「白」と呼ばれる謎の人物の協力を得て、佐賀の唐物屋へと近づいていきます。
異国が日本に求めるものとは何か――。日本初参加(!?)となったパリ万博の舞台裏を、朝の視点から鮮やかに描き出します。
(『幕末万博騒動』(角川文庫) Amazonの紹介文より抜粋・編集)
ここに注目!
前作『編み物ざむらい(三)迷い道騒動』に登場した、アメリカ人通詞と日本人の遊女との間に生まれた若者・朝を主人公としたスピンオフ作品です。
注目を集める「万博」をテーマに、江戸幕府と薩摩藩がともに参加した1867年のパリ万博が舞台となっている点にも惹かれます。
「長益の茶碗」をめぐる騒動や、「白(しろ)」と呼ばれる人物の正体など、見どころが盛りだくさん。朝が墨長屋敷の仲間たちとどのように「仕組み」を果たしていくのかも、関心を集める要素のひとつです。『編み物ざむらい』の黒瀬感九郎やジュノー、コキリといった人物が本作に登場すしてどのように朝にからむのかも気になるところです。
そして何より、17歳となった朝がどのように成長した姿を見せてくれるのかが、本作最大の読みどころでしょう。

今回ご紹介した本
