『松籟邸の隣人(二) 炎夏の章』|宮本昌孝|PHP研究所
2025年3月1日から3月末日の間に、単行本(ソフトカバー含む)で刊行される時代小説の新刊情報リスト「2025年3月の新刊(単行本)」を公開しました。
今月の注目作は、宮本昌孝(みやもと・まさたか)さんによる歴史小説、『松籟邸の隣人(二) 炎夏の章』(PHP研究所)です。
宮本昌孝さんは、1995年に発表した『剣豪将軍義輝』で、そのロマンあふれる物語性が高く評価されました。
2015年には『乱丸』で第4回歴史時代作家クラブ賞作品賞を受賞。
さらに、2020年に出版した『天離り果つる国』では、『この時代小説がすごい!2022年版』(宝島社刊)の単行本部門で第1位を獲得しています。
あらすじ
吉田茂少年が、大磯の地で徳川の忠義の士に襲われた!
夏休みをのんびり過ごすため、別荘・松籟邸に滞在していた茂だったが、世は明治27年(1894)、日清戦争前夜。不平等条約改正を成し遂げた日本だったが、依然として徳川の世を惜しみ、不満を抱く者も少なくなかった。
茂の危機を救ったのは、謎の隣人・天人(あまと)。
茂は天人を慕い、天人も茂を気にかけていた。
そんなある日、茂は大磯に滞在する陸奥宗光夫人・亮子から、天人の壮絶な前半生を明かされる。
天人と亮子の切っても切れない関係を知った茂は――。
虚と実を巧みに織り交ぜた、明治冒険小説の第二弾!(※上記は『松籟邸の隣人(二) 炎夏の章』Amazon内容紹介より抜粋・編集)
読みどころ
本作は、『松籟邸の隣人(一) 青夏の章』に続く、明治の別荘地・大磯を舞台とした冒険ミステリー「松籟邸の隣人」シリーズの第2巻です。
第1巻では、後に宰相となる少年・吉田茂と、謎の隣人・天人が、別荘地で起こるさまざまな事件を解決していきました。
今回は、茂が外相・陸奥宗光夫人・亮子から天人の前半生を明かされる場面が最大の見どころ。
また、明治20年代後半になっても徳川の世を惜しみ、明治政府に不満を抱く者が多かったという社会情勢が物語のテーマとして描かれている点も興味深いです。
陸奥亮子は、その美貌と聡明さから、渡米時代に「ワシントン社交界の華」と称されました。
彼女の生涯は、葉室麟さんの『暁天の星』にも描かれています。

今回取り上げた本
