脳科学捜査官 真田夏希 ダーティ・クリムゾン|鳴神響一|角川文庫
鳴神響一(なるかみ・きょういち)さんの人気の書き下ろし警察小説シリーズの第23巻、『脳科学捜査官 真田夏希 ダーティ・クリムゾン』(角川文庫)が新たに本棚に加わりました。
著者について
鳴神響一さんは、「脳科学捜査官 真田夏希」をはじめ、「神奈川県警『ヲタク』担当 細川春菜」「警察庁ノマド調査官 朝倉真冬」「鎌倉署・小笠原亜澄の事件簿」など、多くの人気シリーズを手がける警察小説作家です。
しかし、2014年に『私が愛したサムライの娘』で第6回角川春樹小説賞を受賞しデビュー。同作は2015年に第3回野村胡堂文学賞を受賞するなど、時代小説の名手としても知られています。特に、「多田文治郎推理帖」シリーズは、多田文治郎(若き日の沢田東江)が探偵役を務める本格的な推理時代小説として、巧妙なトリックが楽しめる隠れた名作です。
物語のあらすじ
横浜みなとみらいの都市型ロープウェイが突如制御を失う事故が発生した
そのゴンドラに偶然乗り合わせていたのは、神奈川県警の心理職特別捜査官・真田夏希。無事に降車した直後、県警本部から出動命令を受ける。
本部に到着すると、犯人と思われる人物から犯行声明が届いていた。そこには、ロープウェイの制御をクラッキングしたという証拠のプログラムが提示されていた──。
しかし、犯人たちは具体的な要求をせず、さらなる犯行を重ねていく……。(『脳科学捜査官 真田夏希 ダーティ・クリムゾン』カバー裏の紹介文より抜粋・編集)
ここがポイント
今回の事件の発端は、警察犬アリシアのハンドラーである本部鑑識課の小川とデート中だった夏希が、都市型ロープウェイ「ヨコハマスカイキャビン」のゴンドラ事故に遭遇したこと。この事故をきっかけに、夏希は刑事部に呼び出され、捜査に加わることになります。
刑事部長室に到着すると、「桃太郎」と名乗る人物からの犯行声明とともに、証拠となるプログラムが送られてきました。捜査の結果、ゴンドラ事故はロープウェイの制御システムがクラッキングされたことによるものと判明。犯人が予告する次の犯行を阻止するのが、夏希らの任務となります。
本シリーズの魅力の一つは、心理分析官である夏希が「かもめ★百合」というハンドルネームを使い、犯人とチャットで駆け引きを繰り広げる点です。
夏希は、犯人のプロファイルを可視化し、犯行の動機を引き出し、次の行動を予測していきます。
さらに、本部での分析だけでなく、夏希自らが現場に赴き、犯人と対峙する場面も本シリーズの大きな見どころの一つです。
今回の事件では、「桃太郎」のほかに、「金太郎」や「浦島太郎」と名乗る人物が現れ、それぞれ異なる文体でメッセージを送ってくることで捜査を混乱させます。
なお、物語に登場する「ヨコハマスカイキャビン」は、実在する「YOKOHAMA AIR CABIN」をモデルにしており、JR桜木町駅前と新港地区の運河パークを結ぶロープウェイです。
作中の緊迫したシーンを読んだ後、実際に夜のロープウェイに乗ってみたくなりました。
今回取り上げた本
書籍情報
脳科学捜査官 真田夏希 ダーティ・クリムゾン
鳴神響一
KADOKAWA・角川文庫
2025年2月25日初版発行
カバー写真・デザイン:舘山一大
目次:
第一章 《ヨコハマスカイキャビン》
第二章 マニック・ディフェンス
第三章 天燈祭
第四章 害悪の告知
第五章 モジュール犯罪
本文283ページ
書き下ろし
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