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【新着本】伊多波碧『別離 名残の飯』心に沁みる人情話

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【新着本】伊多波碧『別離 名残の飯』心に沁みる人情話

別離 名残の飯|伊多波碧|光文社文庫

『別離 名残の飯』(光文社文庫)伊多波碧(いたば・みどり)さんの『別離(わかれ) 名残の飯』(光文社文庫)が、本棚に新たに加わりました。
2023年に第12回日本歴史時代作家協会賞シリーズ賞を受賞した、「名残の飯(なごりのめし)」シリーズの第5弾です。

本書の舞台は江戸、隅田川沿いの橋場の渡し付近。千住大橋の下流に位置し、橋場と向島を結ぶこの渡しのそばに、一膳飯屋『しん』があります。
母のおしげと娘のおけいが営むこの店では、客の好みに合わせた炊きたてのご飯を提供しています。
店の勝手場では、舌が肥えた老料理人の平吉と、元武家で十六歳の見習い健志郎が腕を振るい、旬の魚や野菜を使った美味しい料理を作っています。

物語のあらすじ

一膳飯屋『しん』は、今日も訪れる客に元気を与えています。
橋場の渡し近くで母娘が営む一膳飯屋『しん』には、美味しい食事と人情を求めて客が訪れます。ある日、かわいらしい客が現れました。彼女は酒問屋の隠居から使いを頼まれて来たという少女。しかし、この少女には『しん』の母娘と不思議な縁があるようで――。
暗い過去を抱える人々が偶然の糸で結ばれ、奇跡が生まれる物語。涙を誘う感動のラストが待つ、人気シリーズ第5弾。

(『別離 名残の飯』カバー裏の紹介文より抜粋・編集)

読みどころ

酒問屋『岩井屋』の隠居・彦兵衛は、口うるさくて不平ばかり言っている人物です。半月前には女中にも逃げられ、向島で独り暮らしをしていました。ある日、出かけて帰宅すると、玄関先に一人の女の子が座っていました。彼女はあかねと名乗り、財布を届けに来たと言います。

しかし、財布の中身を確かめた彦兵衛は、小粒が一つ足りないことに気付き、あかねが盗んだのではないかと疑い、泥棒呼ばわりしてしまいます……。

こうして始まる彦兵衛と10歳の少女あかねの奇妙な共同生活。癖のある一言居士の彦兵衛と、気が強く謎を秘めたあかねとのやり取りや暮らしぶりが生き生きと描かれていきます。

『しん』の母娘も二人とかかわりを持つようになります。絡まった糸が解けたとき、何が待ち受けているのでしょうか。

ハートウォーミングなストーリーに加えて、もつれた糸を解きほぐすミステリーのような楽しさもある本書。ますます面白くなったシリーズ第5弾を、ぜひお楽しみください。

今回取り上げた本


書籍情報

別離(わかれ) 名残の飯
伊多波碧
光文社・光文社文庫
2025年1月20日初版1刷発行

カバーデザイン:泉沢光雄
カバーイラスト:立原圭子

目次:
第一章 拾いもの
第二章 勘繰り
第三章 へらず口
第四章 他生の縁

本文256ページ
文庫書き下ろし

伊多波碧|時代小説ガイド
伊多波碧|いたばみどり|時代小説・作家新潟県生まれ。信州大学卒業。2001年、作家デビュー。2005年、文庫書き下ろし時代小説集『紫陽花寺』を刊行。2023年、「名残の飯」シリーズで、第12回日本歴史時代作家協会賞シリーズ賞を受賞。時代小説...