『潮音 第一巻』|宮本輝|文藝春秋
2025年1月1日から1月末日の間に、単行本(ソフトカバー含む)で刊行される時代小説の新刊情報リスト「2025年1月の新刊(単行本)」を公開しました。
今月の注目作は、宮本輝(みやもと・てる)さんによる歴史小説『潮音(ちょうおん) 第一巻』(文藝春秋)です。
宮本輝さんは、1978年「螢川」で第78回芥川賞を受賞し、『錦繍』、『優駿』、『流転の海』など、多彩な作品を通じて人間を描き続けてきた大作家です。
あらすじ
幕末の越中富山に生まれた川上弥一は、藩を挙げて取り組む産業・売薬業に身を投じます。やがて薩摩藩を担当する行商人となった弥一は、次第に薩摩藩の内情に通じるようになり、薬売りと薩摩藩を結ぶ「秘密」に気づき始めます。
黒船来航や幕府の危機を背景にした壮大な物語が、いよいよ幕を開けます。
第二の開国(グローバリゼーションや通貨変動)にさらされる現代日本人にとって、羅針盤となるような大長編です。(※上記は『潮音 第一巻』Amazon内容紹介より抜粋・編集)
読みどころ
宮本輝さんの初期作品、いわゆる「川三部作」(『泥の河』『螢川』『道頓堀川』)や『青が散る』を夢中で読んだ記憶を持つ私にとって、今回の新作も非常に楽しみです。
本書は、幕末・維新の激動の中で奮闘する「富山の薬売り」たちの知恵と勇気を描いた、著者初の歴史小説となります。全四巻にわたる壮大な構想のもと、長年の準備期間を経て世に送り出される開幕篇です。
構想20年、「文學界」への連載期間10年という時間をかけた本書は、2025年の正月から期待を膨らませるに十分な魅力があります。また、4カ月連続の刊行や初版限定特典「讀む薬」も話題の一つです。往年の読者はもちろん、かつてのファンにとっても待ち遠しい一冊です。
なお、幕末に「富山の薬売り」と薩摩藩が手を組んで行った密貿易については、植松三十里さんの『富山売薬薩摩組』(エイチアンドアイ)でも描かれています。興味のある方は、こちらもぜひお手に取ってみてください。