母上は別式女 2|三國青葉|講談社文庫
三國青葉(みくに・あおば)さんの『母上は別式女 2』(講談社文庫)が、私の本棚に新たに加わりました。
本書は、雨城藩(うじょうはん)の奥に仕える別式女筆頭の万里村巴(まりむら・ともえ)を主人公とした『母上は別式女(べっしきめ)』に続く、文庫書き下ろし時代小説シリーズの第2弾です。
物語のあらすじ
「別式女」とは藩の奥向きを守る女武芸者のこと。その筆頭の万里村巴は、月見の宴の日に前任の世津のもとを訪れた。世津は二年前に老舗菓子屋の主人に嫁いで、後任に巴を推挙してくれたのだった。宴のあと外に出ると、殺気を帯びた浪人に出くわし、二人は男のあとを尾けることに……。
(『母上は別式女 2』表紙裏面の紹介文より抜粋・編集)
読みどころ
万里村家の家付き娘だった巴には、藩の賄い方の助(すけ)を務める音次郎という婿がいます。
音次郎は料理の腕は絶品ですが、家にお金をびた一文入れないばかりか、妻にしょっちゅう小遣いを無心し、挙句の果てには幼い息子の財布から金をくすねて高級料亭に通い詰める、食い意地が張った男でもありました。
舅の源蔵とはいつも不毛な皮肉の応酬を繰り返していますが、音次郎の手料理がかすがいとなり、不思議とそれ以上には発展せず、案外仲が良かったりします。
巴と音次郎の間には、誠之助という利発で親思いの子がおり、元気に道場に通っています。
万里村一家のホームドラマのようなやり取りに、笑わされたり、ほろりとさせられたり、癒されます。
小言や愚痴をこぼしながらも結局仲が良いのは、家族が心の内でお互いを信頼しているから。それが、本作の良い読み味につながっています。
今回は、巴の前任で別式女筆頭を務めていた世津(せつ)のもとを訪れ、ある事件に巻き込まれる話など、三話が収録されています。
また、両国橘町で人と猫の縁を結ぶ商いをしている「福猫屋」からもらってきた猫の朔夜(さくや)が家族に加わるのも、「福猫屋」シリーズのファンにはうれしいポイントです。
今回取り上げた本
書籍情報
母上は別式女 2
三國青葉
講談社・講談社文庫
2024年12月13日第1刷発行
カバー装画:丹地陽子
カバーデザイン:鈴木久美
目次
第一話 月見
第二話 後の雛
第三話 紅葉狩り
本文212ページ
文庫書き下ろし