行成想歌|佐藤雫|光文社
佐藤雫(さとう・しずく)さんの『行成想歌(ゆきなりそうか)』(光文社)が新たに本棚に加わりました。
著者は、2019年、鎌倉三代将軍・源実朝を描いた『言の葉は、残りて』で、第32回小説すばる新人賞を受賞してデビューした、近作には細川ガラシャと忠興の愛を描いた『花散るまえに』がある、気鋭の歴史時代作家です。
大河ドラマ「光る君へ」の最終回が放送され、多くの方が「ロス」を感じているのではないでしょうか。私もその一人です。物語の魅力に引き込まれ、最終回まで心を奪われ続けました。
本書は、ドラマで藤原道長の仲間の一人として描かれた書の名人、藤原行成(ふじわらのゆきなり)を主人公に据えた小説です。一条天皇が行成を側近である蔵人頭(くろうどのとう)に任じたことを軸に、彼らの深い信頼と友情を描きます。また、一条天皇と中宮定子の絆、権謀術数渦巻く宮廷を背景に、互いを信じて想い合う愛の形が丁寧に織り込まれています。
物語に登場する行成や一条天皇、定子らの姿は、大河ドラマのキャラクターを彷彿とさせ、視聴後の「ロス」を癒してくれることでしょう。
物語のあらすじ
我が蔵人頭は、優しいが頼りない。しかし、私の目に狂いはなかった。
幼い頃に父を失った藤原行成は、平安貴族としての官位栄達を諦めていました。しかし、行成の人柄を見抜いていた一条天皇は、彼を蔵人頭に任じます。その後、行成は一条天皇の感情の抑制や苦悩を間近で見守ることになります。
筆の名手として名高い「三蹟(さんせき)」の一人である行成とその妻、一条天皇と中宮定子、そして清少納言──互いを信じ、支え合う彼らの姿には、溢れる愛と深い感情が描かれています。
(※カバー帯およびAmazon紹介文より抜粋・編集)
なお、東京・神保町のシェア型書店「ほんまる」では、日本歴史時代作家協会の棚で「平安時代小説フェア」が開催中です(2025年1月初旬まで)。平安ロマンに彩られたおすすめの小説(一部はサイン入り)を多数揃えています。私、理流のおすすめ本も並んでいますので、ぜひ足を運んでみてください。
今回取り上げた本
書籍情報
行成想歌
佐藤雫
光文社
2024年12月30日初版1刷発行
装画:水口理恵子
装幀:大岡喜直
目次
序章 花に会う
第一章 竜顔を仰ぐ
第二章 誓い
第三章 鵲と鶏
第四章 病悩
第五章 内裏炎上
第六章 二人の后
第七章 深雪
第八章 歌を想う時
本文314ページ
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