『母上は別式女 2』|三國青葉|講談社文庫
2024年12月11日から12月20日にかけて刊行される文庫新刊として、「2024年12月中旬の新刊(文庫)」の情報を公開しました。
今回注目するのは、三國青葉(みくに・あおば)さんによる書き下ろし時代小説、『母上は別式女 2』です。
別式女とは?
「別式女(べっしきめ)」とは、大名家の奥を守る女武芸者のこと。御三家や仙台藩などの大藩に置かれ、藩主の妻女の護衛や家臣の子女への剣術指南などの重要な役割を担っていました。本書では、五万石の雨城藩に仕える「別式女筆頭」万里村巴を主人公とし、その活躍が描かれます。
著者について
三國青葉さんは、2012年に「朝の容花(かおばな)」(『かおばな憑依帖』)で第24回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞を受賞しデビュー。「損料屋見鬼控え」や「福猫屋」といった、ハートウォーミングな文庫書き下ろしシリーズでも広く知られる時代小説家です。
あらすじ
8月15日の月見の宴の日、巴は前任の別式女筆頭・世津を訪ね、高輪の老舗菓子屋・大和屋の別邸を訪れます。世津は2年前にその大和屋の主人に嫁ぎ、後任の筆頭に巴を推挙してくれた人物です。 宴の料理を楽しんだ後、二人が屋敷の外に出ると、胡乱な浪人者と遭遇。その男を不審に思った巴たちは自然とその後を尾けることになり……。
(『母上は別式女 2』(講談社文庫)Amazon紹介文より抜粋・編集)
家族の絆と武家の暮らし
このシリーズの魅力は、剣術の腕は立つものの料理が苦手な巴と、上屋敷の賄い方助として腕を振るう夫・音次郎による「凸凹夫婦」の設定です。また、皮肉屋の父や楽天家でしっかり者の息子といった個性豊かな家族たちが登場し、物語を一層豊かに彩ります。
家族の絆や武家の暮らしの喜怒哀楽を織り交ぜたホームドラマ的要素が、時代小説としての趣と融合した作品です。さらに、別式女が主人公として描かれる作品は珍しく、前作でもその新鮮な視点が大いに楽しめました。