おやつ 〈菓子〉時代小説傑作選|細谷正充編|PHP文芸文庫
細谷正充(ほそや・まさみつ)さんが編纂された『おやつ〈菓子〉時代小説傑作選』(PHP文芸文庫)が新たに本棚に加わりました。
PHP文芸文庫が手掛ける「時代小説傑作選」シリーズは、文芸評論家の細谷正充さんがテーマごとに編纂したアンソロジーです。これまでに〈あやかし〉〈なぞとき〉〈なさけ〉など、妖ものや捕物、人情ものといったテーマで構成されており、いずれも旬の人気女性作家による秀作が収められています。
このシリーズは、エンターテインメント小説の目利きとして知られる細谷さんが選ぶ短編に「外れがない」と定評があり、累計50万部を超える大人気シリーズです。
物語のあらすじ
本作に収録されている物語を少しご紹介します。
おみちの父は腕の良い菓子職人ですが、めったに菓子を作りません。家計のためにおみちと母が作ったさつまいもの菓子が人気を呼ぶものの、父はなぜか怒り出します。落ち込むおみちが両親の秘密を知る「夢の酒」(中島久枝)。
菓子屋の長男・善吉は、店の後継者が優秀な手代に決まったことを知り、家を飛び出してしまいます。「お供えもの」(嶋津輝)など、書き下ろし2作を含む全5編を収録。時代を超えて愛される「菓子」をテーマにした短編集です。
(※カバー裏紹介文より抜粋・編集)
おいしいあんこ、味噌饅頭、練切、月見団子、桜餅、鶉餅など、物語に登場するお菓子の数々が魅力的です。さらに、「斑雪(はだれゆき)」「恋桜」「望月のうさぎ」「養生なつめ」「大鶉」といった菓銘には、どんな味がするのだろうと想像力を掻き立てられます。
本書には、お菓子時代小説の第一人者である中島久枝さんと、2023年に『襷がけの二人』で第170回直木賞候補となった気鋭の作家・嶋津輝さんによる文庫書き下ろしが収録されています。この点が大きな魅力の一つです。
その他にも、「上絵師律の似面絵帖」シリーズで職人の世界を巧みに描く知野みさきさん、数々の文庫書き下ろしシリーズを手掛ける篠綾子さん、さらに2021年に『心淋し川』で第164回直木賞を受賞した西條奈加さんなど、豪華な執筆陣が揃っています。どの作品から読み始めるか迷うほどの充実ぶりです。
今回取り上げた本
書籍情報
おやつ 〈菓子〉時代小説傑作選
細谷正充編
PHP研究所・PHP文芸文庫
2024年12月19日第1版第1刷
装丁:芦澤泰偉+明石すみれ
装画:卯月みゆき
収録作品
「夢の酒」(中島久枝 書き下ろし)
「如月の恋桜」(知野みさき『深川二幸堂 菓子ごよみ』だいわ文庫)
「養生なつめ」(篠綾子『菊のきせ綿 江戸菓子舗 照月堂』ハルキ文庫)
「お供えもの」(嶋津輝 書き下ろし)
「大鶉」(西條奈加『まるまるの毬』講談社文庫)
解説 細谷正充
本文306ページ