時代小説アンソロジー てさばき|梶よう子・坂井希久子・篠綾子・山口恵以子・蝉谷めぐ実・藤原緋沙子|徳間文庫
六人の人気女性作家の競演が楽しめる、『時代小説アンソロジー てさばき』(徳間文庫)を書棚にお迎えしました。
本作は、あさのあつこさんや西條奈加さん、澤田瞳子さんらが参加した第1弾『てしごと』に続くシリーズ第2弾です。
梶よう子さん、藤原緋沙子さんら、第1弾とは異なる作家陣が揃い、それぞれ個性豊かな女性職人たちを描きます。各話で異なる職業と人生を丁寧に紡ぎ、江戸の風情をたっぷり味わえる一冊です。
あらすじ
信じるものは己の腕ひとつ――それが私の生きる道
亡くなった人を美しく送り出す化粧師・おちえ。祖母のもとで命を見守る産婆見習い・美登里。依頼人の望む香を作り出す練り香職人・おみつ。早縫いの技術を駆使する仕立職人・おしま。先妻が後妻の家を襲う「うわなり打ち」の仲裁人・お勝。そして、非業の死を遂げた父の仇を討とうとする髪結い・千加。
時代小説の名手六人が、己の技を信じて生きる女性職人たちの凛々しさを巧みな筆致で描き出す傑作アンソロジー。
(『時代小説アンソロジー てさばき』のカバー帯より抜粋・編集)
ここに注目!
特に気になるのが蝉谷めぐ実さんの「うわなり合戦」。
「『うわなり打ち仲人承り〼』なんぞと筆書きした紙を家の戸に張りつけ始めたのは、一体どこのどなたです。そもそもうわなり打ちの仲人なんて生業は、この江戸じゃあ聞いたことがない」 (『てしごと』「うわなり合戦」P.264より)
「うわなり打ち」とは、夫に離縁された先妻が、夫の新しい妻の家を襲うという古い風習のこと。『吾妻鏡』には、源頼朝の妻・北条政子が夫の妾・亀の前に対してうわなり打ちを行ったと記されています。
襲撃のルールとして、離縁後1か月以内の再婚が対象で、襲う側・迎え撃つ側いずれも男性の関与は禁止され、女子のみで行うなど細かな決まりがあったとか。読み始めるとぐいぐい引き込まれる内容です。
今回取り上げた本
書誌情報
『時代小説アンソロジー てさばき』
梶よう子・坂井希久子・篠綾子・山口恵以子・蝉谷めぐ実・藤原緋沙子
徳間書店・徳間文庫
2024年11月30日初刷
カバーイラスト:安楽岡美穂
カバーデザイン:芦澤泰偉+明石すみれ
目次
艶化粧 梶よう子
月満つる 坂井希久子
残り香 篠綾子
針の歩み、糸の流れ 山口恵以子
うわなり合戦 蝉谷めぐ実
万年橋の仇討ち 藤原緋沙子
本文474ページ
初出「日刊ゲンダイ」
「艶化粧」 2023年12月5日号~12月29日号
月満つる 2024年1月5日~2月3日号
残り香 2024年2月6日号~3月2日号
針の歩み、糸の流れ 2024年3月5日号~3月30日号
うわなり合戦 2024年4月2日号~4月27日号
万年橋の仇討ち 2024年5月1日号~5月31日号