富士川六景 幕末明治舟運ものがたり|高部務|光文社
高部務(たかべつとむ)さんの時代小説『富士川六景 幕末明治舟運ものがたり』(光文社)が新たに本棚に加わりました。
甲斐国(現在の山梨県)は、その昔、交通の便が非常に悪い土地でした。江戸時代になると、甲斐国鰍沢(かじかざわ、現在の山梨県富士川町)と駿河国岩淵(いわぶち、現在の静岡県富士市)を結ぶ富士川舟運が整備され、物資の輸送が盛んに行われるようになります。下り舟では甲斐から駿河へ「年貢米」を、上り舟では駿河から甲斐へ「塩」を主に運んでいました。
本書は、幕末という時代を舞台に、富士川舟運に携わる人々の暮らしや人生を描いた短編集で、六つの物語が収められています。
物語のあらすじ
山梨から静岡へと物資を運ぶ、富士川の流れ――。
激流にもまれながらも、時代の波を生き抜いた人々がいました。
彼らは天候に振り回され、地形に阻まれ、時代の変化に翻弄されながらも、己の技と知恵、そして肉体を頼りに人生を切り開きます。
富士川と共に生きた人々の確かな息吹が、ここに描かれています。
(『富士川六景 幕末明治舟運ものがたり』のカバー帯より抜粋・編集)
高部務さんはフリーのジャーナリストとして長年活動され、ノンフィクション作品の執筆で知られています。2023年には小説「海豚(いるか)」で第25回伊豆文学賞(小説・随筆・紀行文部門)最優秀賞を受賞されました。
本書は舟運をテーマに、幕末という激動の時代に根を張って生きる人々の人生を切り取った短編集です。時代背景や人間模様がどのように描かれているのか、読みどころが多い作品となっています。
今回取り上げた本
富士川六景 幕末明治舟運ものがたり
高部務
光文社
2024年11月30日初版1刷発行
装幀:アルビレオ
装画:草野碧
目次
一 魚尻線と狼
二 百足疵の男
三 牛窓職人・嘉助
四 河原の船宿
五 殺し合い
六 鰍沢とアイスクリン
書き下ろし
本文273ページ