戦国剣銃伝|鈴峯紅也|小学館文庫
鈴峯紅也(すずみね・こうや)の『戦国剣銃伝』(小学館文庫)を本棚に迎えました。本作は、戦国時代の天文十九年(1550年)を舞台にした、剣豪たちの熱き戦いを描く長編小説です。紀州有本郷に暮らす小名主の子、孫四郎と源五の兄弟を中心に物語が展開します。彼らの父である誠三郎は、影の流の達人であり、剣豪・愛洲小七郎宗通の弟子。兄弟は幼い頃からその剣術の手ほどきを受けています。
小七郎宗通は、陰流の創始者である愛洲移香斎久忠の息子。本作には、剣聖・上泉伊勢守信綱やその弟子・疋田文五郎、さらには足利十三代将軍・義輝といった歴史上の人物も登場し、剣豪ファンにはたまらない内容です。
物語のあらすじ
時は戦国時代。京から遠く離れた平穏な紀州の地で、影の流を学ぶ孫四郎と源五の兄弟が日々鍛錬に励んでいました。しかし、孫四郎の剣筋を見た弟・源五は突然家を出奔します。兄は剣を捨て農作業に専念しながらも、やがて「則天去私」の極意に目覚めていきます。一方、出奔した源五は傭兵集団「雑賀衆」に身を投じます。彼らの頭領・鈴木孫一は、金と権力にまみれた冷酷な鉄砲の名手でした。
(※カバー裏紹介文より抜粋・編集)
影の流の才を持つ孫四郎と、鉄砲術に秀でた鈴木孫一。異なる武器の遣い手である二人の激突に、胸の高鳴りが止まりません。
本作の舞台である紀州・雑賀の地は、有力な守護大名がおらず、一向宗が根付いていた地域。日前国懸神宮や根来寺、粉河寺、高野山とも関わりを持つ特異な土地であり、戦国の雑賀を描く作品としても非常に興味深い内容です。最近ではあまり描かれることの少ない鈴木孫一と雑賀衆が題材となっており、歴史小説としての読み応えも十分です。
著者・鈴峯紅也さんは、2015年に「警視庁公安J」や「警視庁組対特捜K」などの警察小説で人気を集めた作家です。歴史時代小説は柳蒼二郎名義で発表していましたが、2023年に再刊した『海商』から鈴峯紅也名義に統一しました。
今回取り上げた本
戦国剣銃伝
鈴峯紅也
小学館・小学館文庫
2024年11月11日初版第一刷発行
カバーイラスト:岡添健介
カバーデザイン:鈴木俊文(ムシカゴグラフィクス)
文庫書き下ろし
本文281ページ