デーヴァ ブッダの仇敵|三田誠広|作品社
三田誠広さんの大長編小説『デーヴァ ブッダの仇敵』(作品社)を本棚にお迎えしました。
本書は、釈迦(シッダルタ)の弟子でありながら後に敵対したとされるデーヴァダッタ(提婆達多)を主人公に描く、壮大な歴史・宗教小説です。シッダルタもデーヴァダッタも正確な生没年は不明で、歴史上の人物であると同時に、仏教において深い意義を持つ存在です。
物語のあらすじ
デーヴァダッタを「仏敵」とする仏教の視点、そしてバラモン教の六師外道との対話を通じて、ブッダの根本思想が浮かび上がります。宇宙と自我の一体性やアラーヤ識(深層意識)の探求など、仏教の奥義に迫る圧巻の労作です。
(『デーヴァ ブッダの仇敵』のカバー帯より抜粋・編集)
デーヴァダッタについて調べると、1961年公開の国産映画「釈迦」(大映)では、勝新太郎さんがデーヴァダッタ役を演じており、日本初の70ミリフィルムを使用した話題作としても知られています。仏教開祖・釈迦の生涯を描いたオールスターキャストの作品として、改めて興味がかき立てられました。
著者の三田誠広さんは、高校生の頃に『Mの世界』を「文藝」誌に掲載してデビューし、1977年には『僕って何』で第77回芥川賞を受賞しました。青春小説や家族小説などの現代小説を執筆された後、多数の歴史に関する著作を発表されています。仏教やキリスト教への深い造詣を活かした宗教小説でも知られています。
あとがきには「この作品が私にとって最後の長編になるだろう」と書かれており、寂しさを感じる一方で、650ページ近い大作を目の当たりにすると、まだまだ書き続けてほしいとも感じずにはいられません。
歴史小説ファンとして、そして日本歴史時代作家協会賞の選考委員長としても敬愛する三田先生のこの大作、心して一言一句かみしめながら読み進めようと思います。
今回取り上げた本
デーヴァ ブッダの仇敵
三田誠広
作品社
2024年10月30日第一刷発行
装幀:小川惟久
書き下ろし
本文642ページ