『蘭医繚乱 洪庵と泰然』|海堂尊|PHP研究所
「チーム・バチスタ」シリーズなどの医療ミステリー小説で知られる、海堂尊(かいどう・たける)さんの『蘭医繚乱 洪庵と泰然』(PHP研究所)を「時代小説SHOW」の本棚に新しくお迎えしました。
猛威を振るう「天然痘」を撲滅するために――
江戸時代後期、最先端の学問であった蘭学を志す者たちが、日本国中に現われた。その中にあって、ひと際、輝きを放ったのが、大坂に「適塾」を創った緒方洪庵と、佐倉に「順天堂」を起ち上げた佐藤泰然である。二人は同じ時期に長崎に留学し、良きライバルとして医学の道を突き進むが……。(『蘭医繚乱 洪庵と泰然』カバー帯の説明文より)
緒方洪庵と佐藤泰然という幕末の蘭方医学界を代表する二人を、医師でもある海堂尊さんが描く本作は、医療と歴史が交錯する興味深い小説です。
洪庵は、佐藤雫さんの歴史時代小説『白蕾記』(KADOKAWA)などでも描かれている、よく知られた歴史上の人物。
一方、佐藤泰然は順天堂の創設者であり、司馬遼太郎さんの『胡蝶の夢』に登場する松本良順の父としても知られています。
この二人の蘭医が、当時不治の病とされた「天然痘」にどのように立ち向かっていくのか、読む人の好奇心を強く刺激する作品です。
蘭医繚乱 洪庵と泰然
海堂尊
PHP研究所
2024年10月22日第1版第1刷発行
装幀:芦澤泰偉+明石すみれ
装画・挿絵:伊藤彰剛
表紙図版:更紗尽掛物
●目次
第1部 氷点 文政八年(1825)~天保九年(1838)
1章 鳳雛、覚醒す
2章 浪速の会堂
3章 若鷲、牙を研ぐ
4章 シーボルト事件
5章 安懐堂の駿馬
6章 両雄、邂逅す
7章 天游、死す
8章 絢爛たり、長崎
9章 豪傑・楢林栄建
第2部 融点 天保九年(1838)~安政二年(1855)
11章 花香
12章 蛮社の獄
13章 新天地・佐倉順天堂
14章 不夜城・適塾
15章 牛痘伝来
16章 猛鷲西下
17章 大坂除痘館
18章 天馬降臨
19章 黒船襲来
20章 慎蔵、開運す
第3部 沸点 安政三年(1856)~明治五年(1872)
21章 長崎医学伝習所
22章 ひな鳥の時代
23章 戊午の栄光
24章 虎狼痢・猖獗
25章 大獄の顛末
26章 諭吉無双
27章 あしのかりね
28章 西洋医学所頭取・緒方洪庵
29章 大鵬昇天
30章 老鷲退場
本文393ページ
初出:
「WEB文蔵」(2022年12月~2024年3月)に連載された「西鵬東鷲」を改題し、大幅に加筆修正したもの。
■今回取り上げた本