『警察庁ノマド調査官 朝倉真冬 城崎―嵐山連続殺人事件』|鳴神響一|徳間文庫
鳴神響一(なるかみきょういち)さんの文庫書き下ろし警察小説シリーズ第6弾、『警察庁ノマド調査官 朝倉真冬 城崎―嵐山連続殺人事件』(徳間文庫)を紹介します。
本書は、観光地の旅情と警察捜査を楽しめる警察ミステリーシリーズの第6弾です。
主人公の朝倉真冬は、キャリア官僚でありながら、地方の警察署の不正な捜査活動を正す警察庁特別地方調査官、いわゆるノマド調査官を務めています。
しかし、捜査権を持たないため、現地の警察官と協力しながら事件を解き明かすところが、本シリーズの魅力となっています。
四ヶ月前捜査に関わった丹後半島詐欺事件。その黒幕とみられる男が、城崎温泉の高級旅館に逗留中――。京都府警から連絡を受けたノマド調査官、朝倉真冬は逮捕に立ち会うべく府警捜査二課に合流する。父が殉職した事件の謎を解く鍵を握っているはず。勢い込んで部屋に踏み込むが、男は胸を刺されて死亡していた。さらには第二の殺人事件が発生し……。真冬の前に真の巨悪が立ちはだかる!
(『警察庁ノマド調査官 朝倉真冬 城崎―嵐山連続殺人事件』カバー裏の紹介文より)
朝倉真冬は但馬署の事件を解決したものの、その悲惨な結末に心を重くしていました。
暗澹たる思いを洗い流すため、彼は城崎温泉の地味ながらも城崎らしい旅館に逗留することに。
旅館で但馬牛のステーキとすき焼きを楽しんでいると、京都府警捜査二課の湯本智花警視から電話が入ります。
「先週まで南但馬でちょっとした仕事がありまして……もう解決したんですが」
真冬はかるく今回の事件に触れた。
「お疲れさまでした。実は、うちのほうで拘留中の矢野国雄の取調べが進んでおりまして、前回の丹後半島詐欺事件と指月伏見城詐欺事件の黒幕が発覚したのです」
智花の声は力強かった。
(『警察庁ノマド調査官 朝倉真冬 城崎―嵐山連続殺人事件』P.25より)
矢野は、横地吉也という経営コンサルタントが、一連の投資詐欺事件の元締めだと自供し、しっかりとした裏づけも取れ、明朝逮捕状を執行して逮捕する予定だと。しかも、横地は城崎温泉の高級旅館に宿泊中であるとも。
真冬は明朝の逮捕に立ち会わないか、と智花に頼み、夜明けと同時に踏み込むことで、四時半に車で迎えに来てもらえることになりました。
高級旅館の横地が逗留する部屋に入ると、室内から異臭が漂っており、横地は胸を刺されて死んでいました。
「横地に生きていられると困る者の仕業ですね」、遺体を見つめたまま、ベテラン刑事が声を出しました。
横地を殺した犯人は単なる実行犯かもしれませんが、二件の詐欺事件の背後にはさらに黒幕がいると考えられました。しかし、鍵を握る人物が殺され、捜査二課の捜査は混迷を深めていきます。
真冬は上司の明智審議官に連絡を取り、京都府警と協力して横地殺しの一味を解明することとなりました。
そんな中、京都の嵐山で第二の殺人事件が発生し……。
真冬たちが黒幕を追ううちに、謎の集団「レコンキスタ」の存在が捜査線上に浮かび上がります。それは、能登で殉職した真冬の父親の事件とも関係があるらしく、非常に大きな力を持っています。その正体とは?
レコンキスタ(Reconquista)は、スペイン語で「再征服」を意味し、国土回復運動と呼ばれます。11世紀から15世紀にかけて、イベリア半島でキリスト教徒がイスラム教徒から領土を奪還しようとした運動です。
網走から始まり、男鹿、米沢、能登、伊根と続いた真冬の警察署調査行は、今回で終わります。
旅とグルメで疲れた心を癒してくれる、大好きなシリーズの最終巻。真冬の次なるステージでの活躍を期待しながら、ページを閉じました。
警察庁ノマド調査官 朝倉真冬 城崎―嵐山連続殺人事件
鳴神響一
徳間書店 徳間文庫
2024年9月15日初版
カバーイラスト:爽々
カバーデザイン:アルビレオ
●目次
プロローグ
第一章 城崎にて
第二章 渡月橋のみぎわ
第三章 竹林の敵
第四章 かがり火の焔
エピローグ
本文276ページ
文庫書き下ろし
■今回取り上げた本