シェア型書店「ほんまる」で、「時代小説SHOW」かわら版を無料配布

美貌で剣の達人の奥様と姫様が、御用達菓子舗の難事件に挑む

アドセンス広告、アフィリエイトを利用しています。
スポンサーリンク

『奥様姫様捕物綴り(一) 甘いものには棘がある』|山本巧次|双葉文庫

奥様姫様捕物綴り(一) 甘いものには棘がある山本巧次(やまもとこうじ)さんの文庫書下ろし時代小説、『奥様姫様捕物綴り(一) 甘いものには棘がある』(双葉文庫)がスタートしました。

本書は、藩主の正室(奥様)とその娘(姫様)が探偵役になって、難事件を解決する痛快時代小説です。
イラストレーターの田尻真弓さんによる装画に描かれた奥様と姫様も凛々しくも艶やかで、華やかな物語へのワクワク感がたまりません。

美濃御丈藩藩主の正室・彩智は美貌のうえ、剣の腕も天下一品。おまけに好奇心も人一倍旺盛で、娘の佳奈を巻き込んで、いろんなことに首を突っ込むのが得意だ。そんな折、御丈藩出入りの菓子舗・満月堂の羊羹を食べて体調が悪くなる者が続出する。懇意にしている常陸谷原藩の側室・初音までも、満月堂の菓子を食べて具合が悪くなったと聞いた彩智は、佳奈とともに持ち前の好奇心で事件の真相を調べ始める。奥方様と姫様が手を組んで難事件を解決していく痛快時代小説新シリーズ開幕!

(『奥様姫様捕物綴り(一) 甘いものには棘がある』カバー裏の内容紹介より)

美濃御丈の当主牧瀬内膳正忠基の正室彩智(さち)は、美貌で三十を幾つか過ぎていながら、十六歳の娘佳奈(かな)と姉妹に見えるほど若さを保っています。
好奇心旺盛で、よく言えば天真爛漫、悪く言えば勝手気ままな性分で、周りを困らせることも。
しかも剣術にのめり込み、千葉周作から教えを受けて北辰一刀流の免許皆伝の腕前に。

一方、佳奈も、彩智と千葉のおかげで人並み以上に剣が使えるようになっていました。
大人びて、猪突猛進気味な彩智の手綱を抑えることも。

二人は、二本差しができる若衆姿で江戸市中を出歩くことが珍しくありませんが、江戸留守居役の石動監物や近習の板垣隆之介ら家臣は気が気でありません。
危ない目に遭うことはまずありませんが、相手に傷を負わせたりしていないか心配が尽きません。

天保十三年(1842)初秋のある日、彩智と佳奈が奥座敷で寛いでいる時、監物が「申し上げたき儀」があると面会を求めてきました。

「は。当家出入りの上菓子屋、満月堂について少々」
「満月堂?」
 意外な名が出て、彩智も佳奈も驚いた。
「満月堂がどうしたのか」
「いささか、厄介なことになっております」
「厄介、とは」

(『奥様姫様捕物綴り(一) 甘いものには棘がある』P.11より)

監物によると、満月堂の菓子を食して病になった人が、幾人も出ていて、奉行所の調べが入っているので、出入り差し止めにしたとのこと。
隆之介に問い詰めてみると、常陸谷原三万石の久保田備中守の側室で、彩智とも懇意にしている初音の方も満月堂の菓子で病になったと。

何故、このようなことが起こったのでしょうか?
その事情を探るため、彩智は若衆姿のお忍びで佳奈とともに、満月堂を訪れました。
満月堂では、やくざ者が「うちの若い物が菓子を食べて腹を下した」と強請りたかりで店の主から金を取っていました……。

彩智と佳奈は、隆之介を手足のように使い、さらに調べを進めていくと、事件の裏側に世間を震撼させることが判明していきます。

彩智と佳奈の息の合ったバディぶりや剣劇シーンの華麗さ、隆之介とのコミカルなやり取りなど、軽快なノリで、病みつきになる面白さが詰まっていて、一気読みしてしまいました。
奥様と姫様の次なる捕物が楽しみでなりません。

奥様姫様捕物綴り(一) 甘いものには棘がある

山本巧次
双葉社 双葉文庫
2024年7月13日第1刷発行

カバーデザイン:bookwall
カバーイラストレーション:田尻真弓

目次
なし

本文294ページ

文庫書下ろし

■今回取り上げた本

山本巧次|時代小説ガイド
山本巧次|やまもとこうじ|時代小説・作家 1960年、和歌山県生まれ。中央大学法学部卒業。 鉄道好きで、長年鉄道会社に勤務した経歴を持つ。 2015年、第13回「このミステリーがすごい!」大賞の隠し玉となった『大江戸科学捜査 八丁堀のおゆう...