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さまざまな格付やランキングから、格差社会江戸時代を知る

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『江戸の格付事情』|安藤優一郎監修|MdN新書

江戸の格付事情歴史家の安藤優一郎さんの監修による歴史読み物、『江戸の格付事情』(MdN新書)を紹介します。

現代も「格付」や「ランキング」を題材とするテレビ番組や雑誌記事は、関心が高く、メディアで度々取り上げられるテーマです。商品を購入する際にも、ランキングが決め手となることは珍しくありません。

実は、身分や序列が固定されていた江戸時代は、徳川将軍をトップとする社会体制が維持されて社会が安定していた時代でした。すなわち、将軍を頂点とする江戸の社会は、究極の格差社会と言うことができます。

江戸時代は身分の別があり、現代人からすると窮屈な印象を抱きがちだが、幕藩体制を維持するためには必要な制度だった。
領地は少ないが官職に就ける小大名、領地は多いが身分は低い大大名。
名刺代わり(?)の「○○守」「△△介」など、武士には様々な格付があった。
かたや、庶民はこの格付を遊びとして楽しんだ。相撲の番付風に料亭から遊女に朝晩のおかず、神社仏閣に温泉など、ありとあらゆるものを格付=ランキングしていった。
格差と序列の江戸時代を理解する必携の一冊。

(『江戸の格付事情』カバー帯の説明文より)

本書は、格差社会の江戸の社会を、格付をテーマに、豊富な図版を交えて紹介します。
将軍と大名、旗本と御家人、町人のそれぞれの格付事情が具体的な事例をとともに解説されています。

第三章の江戸の格付事情【職業篇】では、「儲かる商売」として、「諸商売人出世競相撲」という見立番付をもとに、「東西の大関は、米屋と両替商」だと紹介しています。次位の関脇には、唐物屋と造酒屋がランクインしていました。外国からの輸入品を扱う唐物屋が上位に入っているのが面白いとこです。

ちなみに、江戸時代の力士の最高位は横綱ではなく、大関でした。

 その中で最も有名なのが、文化十四年(一八一七)に柳橋(現在の東京都台東区。JR浅草橋近辺)の料亭「万八楼」で行われた大食い大会であろう。なぜ有名なのかといえば、当時の流行作家である曲亭馬琴が編集した随筆集『兎園小説』にその様子が明記されているからだ。
 これによると、武士・商人・農民など身分に関係なく、約二百人の大食い自慢が集結。ただし、みんなが同じ物を食べるのではなく、「菓子の部」「蒲焼鰻の部」「飯の部」「そばの部」「酒の部」に分かれて、それぞれが競い合った。

(『江戸の格付事情』P.164より)

また、第四章では、ランキングの一覧である「見立番付」を通じて、料理茶屋や酒、料理など食文化の発展、名所旧跡、温泉など旅行への関心の高さに焦点を当てて紹介しています。

 その中で最も有名なのが、文化十四年(一八一七)に柳橋(現在の東京都台東区。JR浅草橋近辺)の料亭「万八楼」で行われた大食い大会であろう。なぜ有名なのかといえば、当時の流行作家である曲亭馬琴が編集した随筆集『兎園小説』にその様子が明記されているからだ。
 これによると、武士・商人・農民など身分に関係なく、約二百人の大食い自慢が集結。ただし、みんなが同じ物を食べるのではなく、「菓子の部」「蒲焼鰻の部」「飯の部」「そばの部」「酒の部」に分かれて、それぞれが競い合った。

(『江戸の格付事情』P.164より)

菓子部門の猛者は、「饅頭五十個、羊羹七棹、薄皮餅三十個」を食べて、茶を十九杯も飲んだとそうです。飯の部では、「ご飯六八杯と醤油二合」を平らげた人がいたと。ご飯にお醤油をかけて、掻き込んだんでしょうか。体に悪そうです。

江戸の格付事情

安藤優一郎監修
MdN新書
2023年8月11日初版第1刷発行

装丁者:前橋隆道
帯画像:(表)『千代田之表』「御流レ」(部分)(東京都立中央図書館蔵)
(表裏)『金吹方之図』(部分)(国立公文書館蔵)
本文執筆:加唐亜紀

●目次
はじめに
第一章 江戸の格付事情【将軍・大名篇】
(一)武士の種類
(二)官位
(三)官職名
(四)大名の種類
(五)大名の領地
(六)大名の序列
(七)大名の詰所
(八)大名の服装
(九)大名屋敷
(十)参勤交代
(十一)登城風景
(十二)江戸城の正月
(十三)大老になれる家
(十四)徳川家一門衆
(十五)御三家vs.御三卿
(十六)姫の嫁ぎ先
コラム マウンティングが反映された出世双六
第二章 江戸の格付事情【幕臣・陪臣篇】
(一)将軍直属の家臣
(二)幕臣の給与
(三)幕府の役職
(四)江戸の警察
(五)家来(供)の人数
(六)屋敷のスペース
(七)大奥のヒエラルキー
(八)大名の家来衆
(九)武家女性の呼称
(十)金で武士を買う
コラム 象は果たしてい官位をもらったのか
第三章 江戸の格付事情【職業篇】
(一)公家
(二)医師
(三)学者
(四)絵師
(五)役者
(六)力士
(七)商家
(八)儲かる商売
(九)遊女
(十)職人
(十一)盲人
(十二)町人
(十三)女性の名前
(十四)火消
(十五)火事
(十六)農地
コラム 江戸の家賃
第四章 江戸の格付事情【見立番付篇】
(一)見立番付の流行
(二)江戸の五つ星
(三)菓子屋
(四)死後の世界
(五)大食い大会の流行
(六)人気おかず
(七)宿泊施設
(八)駕籠と乗り物
(九)牢屋
(十)江戸の名湯
(十一)寺社仏閣
コラム 意外や意外な番付
おわりに
参考文献

本文190ページ

書き下ろし

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『江戸の格付事情』(安藤優一郎監修・MdN新書)

安藤優一郎|著作ガイド
安藤優一郎|あんどうゆういちろう|歴史家1965年、千葉県生まれ。歴史家。文学博士。早稲田大学教育学部卒業、同大学院文学研究科博士後期課程満期退学。主に江戸をテーマとして執筆・講演活動を展開。■時代小説SHOW 投稿記事『30の神社からよむ...