『曹操 卑劣なる聖人(七)』|王暁磊著・後藤裕也監訳・濱名晋一・川合章子訳|曹操社
王暁磊(おうぎょうらい)さんの長編歴史小説、『曹操 卑劣なる聖人(七)』(曹操社)をご恵贈いただきました。
本書は、中国人歴史作家による、中国で一番人気の曹操を主人公に据えた「三国志」大河小説の第7巻となります。
1巻平均で500ページをゆうに超える圧倒的なボリュームで、全10巻からなるこの作品は折り返しを過ぎて、本書では、三国志の名場面の一つ、「赤壁の戦い」が描かれます。
河北を平定し、天下統一が現実味を帯びてきた曹操。まずは烏丸へ遠征して袁尚を亡き者にし、返す刀で荊州を屈伏させる。残る敵は孫権と憎っくき劉備だけ。いよいよ赤壁の戦いの火蓋が切られる。曹操の50代半ば、西暦206年―210年を描く。劉備、諸葛亮、周瑜はもちろんのこと、趙雲、孫権、魯粛、黄蓋、郭嘉、董昭、許攸、曹沖らが登場する。
(『曹操 卑劣なる聖人(七)』プレスリリースの説明文より)
本シリーズで読者を惹きつける魅力は、以下のようなことが挙げられます。
・「卑劣なる聖人」と題されような、いくつも欠点を持ちながらも愛すべき魅力に富んだ、曹操の人物造形
・皆が知っている三国志をベースに、幾重にも肉付けした波瀾万丈なストーリー展開
・曹操以外の登場人物も個性的に描かれていて共感を持って読める点
・圧倒的な情報量と語注で、後漢時代の歴史と用語がわかること
「はっはっは……」曹操は突然笑い出した。「周瑜は人より抜きんでていると思ったが、どうも買いかぶっていたようだな。兵の頭数から言えば、われらは連中に勝っている。戦船もわれらのほうが多い。兵糧や軍備に至っては何倍あるかわからんほどだ。それが陣を築いて対峙するとは、身のほど知らずもいいところだ。よかろう。そちらが陣を築くならこちらも陣を築いて、どちらに利があるか目に物見せてやる。戦が長引けば、やつらはどうせ戦えぬ。軍備に窮して兵が疲れ、士気が落ちたそのときに周瑜がどうするか見ものだな。直ちに命を伝えよ。水陸両軍ともこの地に陣を築く!」
(『曹操 卑劣なる聖人(七)』 P.450 第十二章 赤壁に戦端を開くより)
語注によると、曹操と周瑜が戦った地の北岸が烏林、南岸が赤壁で、主な戦場は烏林でした。後に北宋の蘇軾が二篇の「赤壁賦」を作ったことから、後世の者がこの戦いを「赤壁の戦い」と呼ぶようになったと。
時間をつくって、本書で三国志ロマンに浸りたいと思います。
曹操 卑劣なる聖人(七)
王暁磊著・後藤裕也監訳・濱名晋一・川合章子訳
発売:ぱる書房、発行:曹操社
2023年7月18日初版一刷発行
装丁:大谷昌稔
装画:菊馳さしみ
●目次
第一章 曹操の罠
第二章 烏丸への遠征
第三章 張繍と郭嘉の死
第四章 烏丸兵を大いに破る
第五章 粛正と専横
第六章 三公罷免、旧制の復活
第七章 劉備、密かに荊州を狙う
第八章 曹操、丞相となる
第九章 劉表の急死と荊州降伏
第十章 長坂坡の戦い
第十一章 結束して曹操に抗う
第十二章 赤壁に戦端を開く
第十三章 周瑜、苦肉の計
第十四章 赤壁の戦い
第十五章 風声鶴唳の華容道
第十六章 敗戦の処理と曹操の後悔
主な登場人物
主な官職
赤壁の戦いの地図
後漢時代の地図
後漢時代の司隷の地図/後漢時代の冀州、青州、兗州、豫州、徐州の地図
本文615ページ
Wang Xiaolei “Beibi de shengren: Cao Cao di 7 juan” Dook Media Group Limited,2012
This book is published in Japan by arrangement with Dook Media Group Limited.
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『曹操 卑劣なる聖人(一)』(王暁磊著・後藤裕也監訳・岡本悠馬訳・曹操社)
『曹操 卑劣なる聖人(七)』(王暁磊著・後藤裕也監訳・濱名晋一・川合章子訳・曹操社)