『大名格差 江戸三百藩のリアル』|安藤優一郎|彩図社
歴史家の安藤優一郎さんの歴史読み物、『大名格差 江戸三百藩のリアル』(彩図社)を紹介します。
本書は、単行本『大名格差 江戸三百藩のリアル』(彩図社、2020年11月刊行)を文庫化したもの。
徳川将軍家が率いる幕府と、約260もの藩が共同統治した江戸時代。大名といっても100万石から1万石まで格差は大きく、石高以外にも様々な基準で格付けされた。格付けの基本は、将軍との関係である。将軍に近いほど優遇され、遠いほど冷遇された。そんな幕府による大名統制の実態を、五つの視点から解明。未曾有の泰平の世を可能にした。幕府の巧妙な仕掛けに迫る。
(『大名格差 江戸三百藩のリアル』カバー帯の紹介文より)
本書では、大名がどのように格付けされたかを五つの視点から明らかにすることで、二百六十年にもわたり、泰平の世を可能にした幕府の巧妙な大名統制戦略に迫ります。
第一章「石高でみる格差」では、大名の指標であったはずの石高が必ずしも格差には直結しないからくりに注目します。
1万石以上を大名と言い、未満を旗本と呼びます。ところが、唯一の例外として、4500石なのに10万石各の待遇を受けた大名があります。
下野国喜連川家です。なぜ、徳川幕府はそのように厚遇したのでしょうか?
本書では、喜連川家の秘密についても解説されています。
第二章「将軍との関係でみる格差」では、将軍との関係で大名が親藩・譜代・外様の3種類に類別された実態を明らかにします。
第三章「江戸城でみる格差」では、大名の格差が視覚化された江戸城内の御殿に焦点を当てます。
第四章「江戸藩邸でみる格差」では、同じく大名の格差が視覚化された江戸藩邸に焦点を当てます。
第五章「参勤交代でみる格差」では、参勤交代の行列が「歩く大名格差」の役割を果たしている様子を明らかにしていきます。
これらの五つの切り口を通して、大名からみた江戸の格差社会を解き明かし、幕府の巧妙な全国統治の実態に迫ります。
わかりやすい解説でライトに読めて、これまで、時代小説や時代劇で漠然と感じていた大名家の違いがすっきりと理解できます。
大名格差 江戸三百藩のリアル
安藤優一郎
発行:彩図社
2023年4月12日第1刷
カバー画像:「徳川盛世録」(都立図書館所蔵)
●目次
はじめに―ー格付けされた三百諸侯
全国地図(本書で登場する主な藩を掲載)
第一章 石高でみる格差
「石高でみる格差」の基本―ー表高と実高
01 4500石なのに10万石待遇 喜連川家の格付けにみる幕府の思惑
02 幕府から大名のように遇された参勤交代をする旗本たち
03 日本代表の箔を付けるため石高ゼロでも10万石待遇を得た対馬藩
04 実は全国に大勢いた城を持たない大名たち
05 幕府も気をつかっていた一国を治める大大名たち
第二章 将軍との関係でみる格差
「将軍との関係でみる格差」の基本――親藩・譜代・外様
06 御三家は御三卿に乗っ取られた? 将軍を継げる家で起きた異変
07 「保険」のはずの御三家も分家をつくってお家騒動を回避
08 将軍になるはずだった? 越前松平家の数奇な運命
09 家康もまとめ上げるのに苦労した同族松平家との親族関係
10 老中になりやすかった譜代大名となりにくかった譜代大名の違い
11 家康の同期たちを幕府はいかに扱ったのか?
12 外様だけれど譜代待遇で幕政にも参加した大名たち
第三章 江戸城でみる格差
「江戸城でみる格差」の基本――日本最大の儀礼空間
13 駕籠から降りるか乗ったままか 格差で変わる登城風景
14 控えの部屋までランク分け 大名たちの厳しい行動範囲
15 将軍に会うため部屋を移動 格差を視覚化した江戸城の儀礼
16 江戸がもっとも慌ただしくなる 江戸城の正月にもる格差
17 日本一厳しい? 江戸城における大名たちの服装マナー
18 家のレベルに応じて変化 将軍からのプレゼントの中身
19 御三家には丁寧だがほかはぞんざい 将軍からかけられる言葉にまで格差
第四章 江戸藩邸でみる格差
「江戸藩邸でみる格差」の基本――すべての大名が集う町
20 地元の石高が江戸藩邸の広さを決めた
21 江戸藩邸の見た目から大名のランクをわからせた幕府
22 将軍が大名藩邸を訪れた政治的な意味とは?
23 同じランクの藩と情報を交換 藩の外交官たちの日常
第五章 参勤交代でみる格差
「参勤交代でみる格差」の基本――全国に広がる大名の序列
24 幕府の命も無視してド派手に プライドがかかっていた参勤交代
25 他家との遭遇を回避せよ 大名行列の作法
26 不穏なエピソードが満載 宿のかぶりはトラブルのもと
27 江戸入りした大名たちに課せられた おえら方への挨拶回り
本文238ページ
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『大名格差 江戸三百藩のリアル』(安藤優一郎・彩図社)