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仇討ちを誓う女、仇持ちの町医者、隻腕の少年が暮らす栗山庵

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『仇持ち 町医・栗山庵の弟子日録(一)』|知野みさき|PHP文芸文庫

仇持ち 町医・栗山庵の弟子日録(一)知野みさき(ちのみさき)さんの連作時代小説、『仇持ち 町医・栗山庵の弟子日録(一)』(PHP文芸文庫)を紹介します。

著者は、「上絵師 律の似面絵帖」「神田職人えにし譚」などの文庫書き下ろし時代小説で、今、最も注目される時代小説家の一人。
本書は、待望の新シリーズの第一弾です。

藩の上役の奸計によって家族を亡くし、遊女に落とされた伊勢国津藩の武家の娘・凛。復讐を誓う彼女は、津藩江戸屋敷に出入りする町医者・栗山千歳に身の上を偽って近づき、彼の弟子となった。しかしその千歳は、かつて恨みを買い、命を狙われている「仇持ち」であった――。凛、千歳、千歳の弟子として凜を警戒する隻腕の佐助。わけありの三人が織り成す人情時代小説シリーズ第一弾。

(『仇持ち 町医・栗山庵の弟子日録(一)』カバー裏の内容紹介より)

石川凜は、伊勢国津藩の武家の娘でした。
五年前の十七歳のとき、亡くなった父の跡を継いで勘定方だった兄を上役の山口成次と同輩の竹内昌幸に濡れ衣を着せられた上で毒殺されました。

横領の咎で石川家は取り潰され、凛と妹と母親の女三人は、町の長屋暮らしに。一年後、妹が病で、母親が心労と過労で亡くなりました。

母親の野辺送りを済ませた後、一人ぼっちとなった凜は、兄の形見の文箱に隠されていた訴状から、山口の横領とその手口を知りました。
勘定吟味役に訴えでようと思ったものの、女の身一つでは心もとなく、相談したのが兄の同輩の竹内でした。

 が、これは大きな過ちだった。
 竹内こそが、忠直に濡れ衣を着せようと山口に進言したものだったのだ。
 ――くれぐれも内密にことを運ばねばならぬ――
 そう諭して、竹内は町外れの旅籠に凜を呼び出した。

(『仇持ち 町医・栗山庵の弟子日録(一)』P.13より)

竹内に騙されて、訴状を奪われた上に、遊女屋に売り飛ばされてしまった凜。
「私が仇を討ってやる!」と武家の意地で、苦界を抜け出した凜。
金奉行を勤め江戸定府の山口を追って、凜は江戸に出てきました。

町医者栗山千歳が、山口がいる津藩中屋敷に出入りしていることを摑み、千歳に取り入って伴として中屋敷に上がり込もうという魂胆で、狂言に及びました。

凜は永代橋の上で、目当ての男、町医者千歳と片腕の男児佐助と連れ立って橋を渡って来るのを認めると、欄干の上に立ち、下に舟がないことを確かめてから一息に大川へ飛び込みました。

「命を粗末にしやがって」
「男に捨てられて……行くあてもなく、身寄りもないので、つい思い詰めてしまいまして……」
「けっ、莫迦莫迦しい。あんなのせいで先生が風邪でも引いたら、どうしてくれんだよ?」
「佐助、よせ」
 千歳にたしなめられて佐助は口をつぐんだが、歩きながらも凜をじろじろ睨みつけくる・
 
(『仇持ち 町医・栗山庵の弟子日録(一)』P.8より)

凜は千歳に助けられ、首尾よく千歳の自宅兼診察所「栗山庵」に、家事手伝い兼弟子として置いてもらえることになりました。
かくして、千歳と佐助と凜の三人暮らしが始まりました。

第一話の「仇持ち」は、凜の素性から不幸な過去、そして仇討ちの顛末までテンポよく描かれていき、一気に読めます。
しかも、千歳自身も以前、患者を死なせてしまったことがあり、家人にずっと恨まれて、命を狙われることもあって、「仇持ち」でした。
佐助にも人に言えない秘密があって。
三者三葉の設定が面白く、ストーリーテラーの面目躍如で、たちまち、このシリーズが好きなってしまいました。
山本祥子さんの表紙装画も三人のイメージにぴったりで、気に入っています。

巻末の細谷正充さんの解説で、第一話の「仇持ち」がもともとはアンソロジー『いやし 〈医療〉時代小説傑作選』(宮部みゆき、知野みさき他・PHP文芸文庫)用に書き下ろされた短編と知って、なるほどと膝を打ちました。

仇持ち 町医・栗山庵の弟子日録(一)

知野みさき
PHP研究所 PHP文芸文庫
2023年3月22日第1版第1刷発行

装丁:芦澤泰偉
装画:山本祥子

●目次
第一話 仇持ち
第二話 夏の鎌鼬
第三話 忘れぬ者
解説 細谷正充

本文243ページ

「仇持ち」(『いやし〈医療〉時代小説傑作選』所収 PHP文芸文庫)
「夏の鎌鼬」「忘れぬ者」は書き下ろし

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『落ちぬ椿~上絵師 律の似面絵帖』(知野みさき・光文社時代小説文庫)
『飛燕の簪 神田職人えにし譚』(知野みさき・時代小説文庫)
『仇持ち 町医・栗山庵の弟子日録(一)』(知野みさき・PHP文芸文庫)
『いやし 〈医療〉時代小説傑作選』(宮部みゆき、朝井まかて他・PHP文芸文庫)

知野みさき|時代小説ガイド
知野みさき|ちのみさき|時代小説・作家 1972年生まれ。ミネソタ大学卒業。 2012年、『鈴の神さま』でデビュー。同年、『妖国の剣士』で第4回角川春樹小説賞受賞。 ■時代小説SHOW 投稿記事 『江戸は浅草』|風変わりな長屋の住人たちが繰...