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兄頼朝と弟義経、二人の天才に挟まれた凡人源範頼の生きる道

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『義経じゃないほうの源平合戦』|白蔵盈太|文芸社文庫

義経じゃないほうの源平合戦白蔵盈太(しろくらえいた)さんの文庫書き下ろし時代小説、『義経じゃないほうの源平合戦』(文芸社文庫)をご恵贈いただきました。

大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の影響で、この一年ほど、鎌倉時代を描いた歴史時代小説を読んだ年はありません。
それらの小説を読み、毎週ドラマを観て、SNSで視聴者の投稿で振り返り、この時代についての歴史知識がどんどん増えて、親しみが持てるようになりました。

やっぱり鎌倉なんか、来るんじゃなかった。蒲御厨でひっそりと暮らしていた範頼は、命の危機を感じて頼朝のもとへ馳せ参じた。だが、会って早々、兄の怒りに触れ言葉も出ない。ちくしょう、怖すぎるだろう、この兄さま。そんな時、助け舟を出してくれたのが、弟の義経だった。打倒平家に燃え勇猛果敢に切り込んでいく弟を横目に、兄への報告を怠らず、日々の兵糧を気にする自分の、なんと情けないことか。誰もが畏れる知略家の頼朝と戦に関しては天賦の才を持つ義経。二人の天才に挟まれた、地味だが堅実で非情になれない男、源範頼の生きる道。

(『義経じゃないほうの源平合戦』カバー裏の説明文より)

本書は、源義朝の六男、範頼の生涯を描いた歴史時代小説です。

『討ち入りたくない内蔵助1』で大石内蔵助を、『画狂老人卍 葛飾北斎の数奇なる日乗』では葛飾北斎を、ユーモアとペーソスを交えて独自の視点で描いた著者が、今回光を当てたのが範頼。

兄・頼朝(義朝の三男)と弟・義経(義朝の九男)の間に挟まれた、ちい兄ちゃんです。大河では俳優の迫田孝也さんが好演されていました。兄弟には、ほかに義経と同母兄の七男全成と八男義円がいました。

「それから、こたびの義仲追討軍の本隊だがな。範頼、お主が総大将を務めよ」
 ……はぁ?
 ……何それ、どういうこと?
 
(『義経じゃないほうの源平合戦』P.55より)

木曽義仲を牽制すべしという頼朝の命を受けて少数の手勢とともに京に向かった義経が、不破の関や伊勢で期待以上の戦果を挙げます。
一方、後白河法皇の巨漢を襲撃して法皇の身柄を拘束した義仲に対して、頼朝はついに対決を決意します。

総大将をつとめる頼朝の配下の一部将として、その指示に沿って戦うだけと思っていた範頼は混乱しました。

 ちょっと待て……荷が重すぎる。そんなの聞いてない。
 
(『義経じゃないほうの源平合戦』P.57より)

史実では、この後の平家追討軍でも、軍略家の義経をさしおいて、平家追討軍の総大将を任じられます。

物語では、(頼朝でもなく)義経じゃないほうの範頼の視点から、源平合戦が描かれていきます。
とにかく怖い兄を恐れ、戦さとなると目をきらきら輝かす弟が羨ましい凡人、いや普通人の範頼。そんなの範頼の源平記をじっくりたっぷりと味わいたいと思います。

義経じゃないほうの源平合戦

白蔵盈太
文芸社 文芸社文庫
2022年12月15日初版第1刷発行

カバーイラスト:龍神貴之
カバーデザイン:谷井淳一

●目次
はじめに
登場人物
一、挙兵
二、旭将軍
三、義仲追討
四、宇治川の戦い
五、一の谷の戦い
六、三日平氏の戦い
七、葦屋浦の戦い
八、屋島の戦い
九、壇之浦の戦い
十、造反
十一、義経じゃないほうの造反
用語解説
あとがき

本文295ページ

書き下ろし。

■Amazon.co.jp
『義経じゃないほうの源平合戦』(白蔵盈太・文芸社文庫)
『討ち入りたくない内蔵助1』(白蔵盈太・文芸社文庫)
『画狂老人卍 葛飾北斎の数奇なる日乗』(白蔵盈太・文芸社文庫)

白蔵盈太|時代小説ガイド
白蔵盈太|しろくらえいた|時代小説・作家 1978年、埼玉県生まれ。 2020年、「松の廊下でつかまえて」(文庫刊行時に『あの日、松の廊下で』に改題)で、第3回歴史文芸賞最優秀賞受賞。 時代小説SHOW 投稿記事 著者のホームページ・SNS...