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くらまし屋を追撃する暗黒街の凄腕たち。惣一郎にも好敵手が

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『風待ちの四傑 くらまし屋稼業 8』|今村翔吾|時代小説文庫

風待ちの四傑 くらまし屋稼業 8今村翔吾さんの文庫書き下ろし時代小説、『風待ちの四傑 くらまし屋稼業 8』を紹介します。

本書は、飴細工屋を表稼業をもつ堤平九郎らが、依頼人のために命を賭けて、この世から人を晦(くら)ませる裏稼業「くらまし屋」の活躍を描く、人気シリーズ第8弾です。

霙ふる師走のころ、夜討ちの陣吾と呼ばれ、裏の世界で畏れられている男が、平九郎の露店にやって来た。呉服屋の大店「越後屋」に勤める比奈という女性を晦まして欲しいという。一方、極寒の「夢の国」に送られた「虚」の一員・惣一郎は、敵の襲来を待ちわびていた――江戸と「夢の国」で繰り広げられる平九郎・迅十郎・そして今一人……、暗黒街の凄腕たちの人智を超えた超弩級の戦い。興奮と感動必至。直木賞作家の本領、天下無敵の大人気エンターテインメントシリーズ。
(上巻 表紙カバー帯の内容紹介より)

宝暦四年(1754)師走。
駿河町の呉服屋越後屋で働く比奈は、手代の伊八郎と共に、越後屋傘下の木場の千代屋へ派遣されました。この二、三か月の間に、主力の手代、丁稚が五人も立て続けに辞めてしまい、忙しい師走を乗り切ることができないと、当座で良いから人を貸してほしいと越後屋に泣きついてきたのでした。

千代屋で働きだした伊八郎は、すぐに千代屋の状況に不審を覚え、帳簿を見たりいろいる調べたりして、千代屋が大変なことに手を染めている証拠をつかみました。
そして、恩人と慕っている大番頭の富蔵に分かったことを洗いざらいぶちまけると、この足で富蔵の小舟町の宅を訪れると言って、比奈と別れました。

ところが、翌日、伊八郎は千代屋に姿を見せず、駿河町の越後屋にも行っていません。
比奈は不安に押しつぶされそうになりながらも、越後屋をあとにすると、小舟町の富蔵の邸宅に向かいました。
ところが、富蔵の邸宅にも伊八郎は姿を見せていないと。

比奈は伊八郎が千代屋に疑念をいだいていて、これ以上は聞かぬほうがよいと伊八郎から止められたことをを話し、千代屋が何か大変なことに手を染めていると語っていたことを富蔵に告げました。
すると、富蔵は千代屋が伊八郎を襲ったのかもしれないと語りました。
世の中には金さえ積めば、獲物を何処までも追い詰めて必ず仕留める男がいると。

「ああ、炙り屋だったか」
 富蔵は記憶を喚起するように指で額を叩いた。
「炙り屋ですか?」
 初めて聞いた名で、思わず比奈は繰り返した。
「伊八郎が危険を感じ、くらまし屋に依頼したとも考えられる」
「くらまし屋……」

(『風待ちの四傑 くらまし屋稼業 8』P.48より)

平九郎は、香具師の高輪の禄兵衛の片腕で、旅籠上津屋の主人の陣吾から、比奈という二十三の女を晦ましてほしいと依頼されます。
陣吾と比奈は育った長屋が一緒の昔馴染みでした。

一方、極寒の地、夢の国に送られていた「虚(うつろ)」の榊惣一郎。
「虚」が作った村は二つの勢力から度々襲撃を受けていました。その敵の中に、神懸かりめた凄まじい弓矢の達人が現れ、常に劣勢を強いられることとなりました。
その弓矢の達人の正体は……。

本書は、最初の発売予告から半年くらいじらされて、発売となりました。
ページ数もこれまでの1.6倍くらいのボリュームがあって、次々に見せ場が続く、「くらまし屋稼業」シリーズで最高のエンタメ度です。

これまでのシリーズでは、平九郎が依頼人と接触して晦ましの仕事を受け、七瀬や赤也と協力しながら、さまざまな障害を乗り越え、炙り屋万木迅十郎をはじめとする難敵と戦いながら、晦ましの逃走劇を続けます。果たして依頼を完遂できるのかということで、爽快感を満喫し、サスペンスとスリルに興奮できるというスタイルでした。

今回では、江戸と夢の国と二元で物語は進行していきます。

江戸では、くらまし屋の平九郎と迅十郎が、比奈を狙う敵と戦うことに。暗黒街の凄腕が続々加わり、空前絶後の大バトルが堪能できます。
夢の国では、「虚」の榊惣一郎が、弓矢の達人という新キャラクターと対決します。
剣と弓の異種の武器による一対一の戦いに、息も詰まるような緊張感を覚えました。

シリーズのこれまでの巻の2倍以上に痛快度がパワーアップし、気になる夢の国の姿も徐々に明らかになっていきます。
「くらまし屋稼業」からますます目が離せません。

風待ちの四傑 くらまし屋稼業 8

今村翔吾
発行:角川春樹事務所 ハルキ文庫・時代小説文庫
2022年11月8日第一刷発行

装画:おおさわゆう
装幀:芦澤泰偉

●目次
序章
第一章 越後屋の切れ者
第二章 長屋の絆
第三章 白銀の狩人
第四章 四三屋の利一
第五章 暗黒街の地図
第六章 比奈の旅立ち
第七章 猿橋の上で
第八章 豪と疾
第九章 玄人の詩
終章

本文410ページ
初出「ランティエ」2022年3月~11月号

■Amazon.co.jp
『風待ちの四傑 くらまし屋稼業 8』(今村翔吾・ハルキ文庫・時代小説文庫)(第8巻)
『くらまし屋稼業』(今村翔吾・ハルキ文庫・時代小説文庫)(第1巻)

今村翔吾|時代小説ガイド
今村翔吾|いまむらしょうご|時代小説・作家 1984年京都府生まれ。ダンスインストラクター、作曲家、埋蔵文化財調査員を経て、作家に。 2016年、「蹴れ、彦五郎」で第19回伊豆文学賞最優秀賞受賞。 2016年、「狐の城」で第23回九州さが大...