『れんげ出合茶屋』|泉ゆたか|双葉社
泉ゆたかさんの長編時代小説、『れんげ出合茶屋』(双葉社)をご恵贈いただきました。
読むと元気が出る、江戸お仕事小説を次々に発表してきた著者が、本書で描くのは、不忍池の畔の出合茶屋という、江戸のラブホテルを舞台にした時代小説です。
「うんと気の強い女中が欲しい」そんな注文が入り咲は新しい奉公先のある上野池之端を訪れる。不忍池の畔のあばら家で待っていたのは、なんと幼い頃の咲を連れて奉公していた大店の元お嬢様、志摩だった。
さらに妙な色気のある女、香も加わり、志摩は男女が人目を忍んで逢、瀬を楽しむ“出合茶屋”を開くという。
やがて、三人の店はよそにない趣向が受けてお江戸で大評判に。だが、次々と厄介事が舞い込んで……?(『れんげ出合茶屋』カバー帯の説明文より)
料理茶屋を描いた時代小説は少なくありませんが、男と女が密会をする出合茶屋を描いた作品というのはあまり聞いたことがありません。
掃除と炊事の腕が飛び切り良く、腕利きの女中として仕事をしていた咲は、口入屋の老女将から新しい仕事を紹介されます。
『ちょっとやそっとのことでは動じない、うんと気の強い女を寄越してくれ』と言われて出かけた先は、上野池之端、不忍池の畔。
蓮の名所で、出合茶屋が建ち並ぶ界隈で、三十くらいの独り身の女主人志摩が、新しく出合茶屋を開くと言います。
一度所帯を持ちながら離縁して女中をする咲と、元大店のお嬢さまの女主人・志摩、どんな男も簡単に落としてしまう艶っぽい香の三人のわけありの女たちが始めた出合茶屋。
どんな知恵と工夫で、新しい店を盛り上げていくのでしょうか、大いに気になります。
★読了後のレビュー
れんげ出合茶屋
泉ゆたか
双葉社
2022年9月18日第一刷発行
装画:最上さちこ
装丁:鈴木久美
●目次
第一章 天花粉
第二章 蓮飯
第三章 蛇神さま
第四章 遠眼鏡
第五章 紅
本文271ページ
書き下ろし。
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『れんげ出合茶屋』(泉ゆたか・双葉社)