10/8(土)、八重洲ブックセンターにて
2022年10月8日(土)、第11回日本歴史時代作家協会賞(日本歴史時代作家協会主催)の授賞式、トークショー&サイン会を、東京駅近くの八重洲ブックセンターで開催されました。授賞式は、3年ぶりの開催で、多くの作家や編集者、関係者のほか、受賞作を購入された読者も交えた、一般公開形式で行われました。
私、今回は賞の選考委員および日本歴史時代作家協会の会員という立場で、参加してきました。
簡単に当日の様子をレポートします。
第11回受賞者
●新人賞
千葉ともこさん『戴天』文藝春秋
●文庫書き下ろし新人賞
筑前助広さん『谷中の用心棒 萩尾大楽:阿芙蓉抜け荷始末』アルファポリス文庫
●シリーズ賞
坂岡真さん「鬼役」「鬼役伝」光文社時代小説文庫、「はぐれ又兵衛例繰控」双葉文庫などのシリーズ作
氷月葵さん「御庭番の二代目」(18巻完結)二見時代小説文庫、「神田のっぴき横丁」二見時代小説文庫、「仇討ち包丁」コスミック時代文庫のシリーズ作
●作品賞
矢野隆さん『琉球建国記』集英社文庫
吉川永青さん『高く翔べ 快商・紀伊國屋文左衛門』中央公論新社
第10回受賞者
有馬美季子さん「はないちもんめ」シリーズ(祥伝社文庫)、「はたご雪月花」光文社文庫シリーズ作
授賞式には、ご家庭の事情で出席できなかった坂岡真さんを除く5名の受賞者と、コロナ禍で授賞がなかった第10回のシリーズ賞受賞の有馬美季子さんが受賞者として出席されて行われました。
日本歴史時代作家協会代表理事の藤原緋沙子さんの開会のご挨拶の後、選考委員長の三田誠広さんから選評がありました。
年々レベルが高くなり、今回は、戦国や幕末ものや、捕物帖やグルメ小説、絵師ものといった従来の類型から大きく飛躍した、作品が並び、歴史時代小説のさらなる可能性を感じたという、三田さんのコメントが印象に残りました。
デビュー2冊目の『戴天』で新人賞を受賞された千葉ともこさんの「2冊目の壁」を乗り越えるために格闘されたお話。
若い頃鬱屈していた時期に藤沢周平さん、池波正太郎さんらの時代小説に出合って共感し、福岡の偉大な歴史小説家の葉室麟さんに励まされ、その背中を追って小説家の道を歩んできた筑前助広さん。
歴史に惹かれて、田沼意次は本当に悪者だったのか、の疑念をずっと感じていた氷月葵さん。調べて確信して書き続けた「御庭番の二代目」シリーズは思い入れのある作品。
「仲間」を大切にする矢野隆さんのスピーチは、作品の世界を想起させるよう飾らない人柄がにじみ出て、と爽快感のあるものでした。
2度目の候補となる吉川永青さん。一片の悔いも残さず生きるのは難しいが、努めてそう生きたいという思いを託した紀伊國屋文左衛門の物語で受賞されました。
受賞者のみなさんの率直な喜びが伝わってきて、そのスピーチも心を震わせ、胸に迫るものがありました。
あわせて今、取り組んでいる作品、刊行間近の本の話を披露いただきました。
トークショーは、文芸評論家で選考委員の菊池仁さんがMCをつとめて、6人の受賞者を交えて行われました。
最初に受賞作品の担当編集者に、作品執筆時のエピソードや受賞者の人となりを語ってもらう企画。
Sの編集者とMの作家の組み合わせの妙や、作家の意外な素顔が伝わり、会場が一気に和みました。
今回、矢野さんの応援で、前身の第5回歴史時代作家クラブ賞作品賞の澤田瞳子さん、第8回日本歴史時代作家協会賞作品賞の天野純希さんが駆け付け、千葉さんの応援で、山村教室の七尾与史さん、坂井希久子さん(第6回新人賞)、美輪和音さん、西尾潤さんが参加されました。
筑前さんのネット仲間、鷹樹烏介さん、早川隆さん、陸理明さんも。
そのほか、新見健さん(第5回文庫新人賞)や鳴海風さんもこのために来場されて盛況でした。
「作家は原稿執筆中は孤独」「誰とも話さないので表情筋が衰えてしまう」
そんな作家の先生方のストレス解消となるような楽しいイベントでした。
似たような引きこもりがちな生活を送っていますが、今回のリアルイベントを通じて、著作物やSNSでしか知らない作家の一面に触れ、ますます時代小説が好きになった一日でした。
授賞されたみなさん、おめでとうございます!
当日、ご来場いただきましたみなさん、本当にありがとうございました!