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消えた原稿の行方と文豪の謎の死。幼馴染の刑事コンビが挑む

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『鎌倉署・小笠原亜澄の事件簿 稲村ヶ崎の落日』|鳴神響一|文春文庫

鎌倉署・小笠原亜澄の事件簿 稲村ヶ崎の落日鳴神響一(なるかみきょういち)さんの文庫書き下ろし現代ミステリー、『鎌倉署・小笠原亜澄の事件簿 稲村ヶ崎の落日』(文春文庫)をご恵贈いただきました。

『脳科学捜査官 真田夏希』をはじめ、次々に発表する警察小説ミステリーがいずれも人気となっている著者による、新たな警察シリーズの誕生。
今回の主人公は、「刑事特捜隊 伊達政鷹」に登場した、平塚出身の女性警察官・小笠原亜澄です。スピンオフ作品と言えるでしょうか。

鎌倉山の邸宅の書斎で文豪の蘆名盛雄が死体で発見された。神奈川県警捜査一課の吉川元哉がコンビを組まされたのは、幼馴染で鎌倉署刑事課の小笠原亜澄。年下なのに小生意気で口煩い亜澄だが、抜群の推理力で、これまでも共に難事件を解決してきた相棒だ。聞き込みを開始すると蘆名の遺作原稿が見つからないというのだが……。

(『鎌倉署・小笠原亜澄の事件簿 稲村ヶ崎の落日』カバー裏の紹介文より)

自宅で不自然死の状態で発見された大作家の蘆名盛雄の邸宅を、神奈川県警刑事部捜査一課の吉川元哉と鎌倉警察署刑事課の小笠原亜澄のコンビが訪ねます。
補充捜査で、屋敷に勤めている使用人たちの事情を聞くためでした。

「おっそろしい屋敷だなぁ」
 元哉はうなり声を上げた。
「なに、マヌケ面で見てんのよ」
 隣で毒づく女の声が響いた。
 まったくこの女はいつもこうだ。
 ムッとして元哉は隣へと視線を向けた。
 女は口もとに皮肉な笑みを浮かべて元哉を見ている。

(『鎌倉署・小笠原亜澄の事件簿 稲村ヶ崎の落日』P.45より)

亜澄は元哉より二つ年下ながら、一緒に受けた巡査部長試験で亜澄は受かり元哉は落ちて、階級では追い越しています。
しかも、二人は平塚の銀座通り商店街育ちの幼馴染で、子供の頃にいじめられていた元哉を救ったのが亜澄で、それ以来、亜澄には頭が上がらない元哉です。

秘書と財産管理をしている富田実、運転手と雑用をしている金上利夫、料理と掃除などハウスキーパーの三村和枝と松本麻里奈の四人から話を聞くことに。

(本シリーズも登場人物に武将の姓を使用するという命名ルールを踏襲しています。蘆名と金上、会津執権の世界)

最後に麻里奈の話を聞いていると、出版社の編集者鳥居忠志が香典を持って現れました。

「で、今回も蘆名さんの原稿を取りに見えたのですか」
 亜澄は問いを進めた。
「そうなんです。実はうちの『ベスト讀物』七月号に一五〇枚の中編小説を頂く予定になっていました。半年ほど前にOK頂いた作品です」

(『鎌倉署・小笠原亜澄の事件簿 稲村ヶ崎の落日』P.45より)

蘆名の遺作にあたる原稿がどこにも見当たらないと言います。

蘆名盛雄の葬儀告別式から八日が経った六月七日、亜澄と元哉は鎌倉山の外れにある夫婦池公園に来ていました。

フリーライターの上原尚一が何者かに後頭部を殴られた撲殺死体で見つかったのでした。
蘆名邸から五〇〇メートルくらいしか離れておらず、二つの死には関連があるのでしょうか?
現代を代表する文豪とフリーライター、二人の間にどんな関係があるのでしょうか?

聞き込みから手掛かりをつかんでいき、大胆に推理を組み立てていく亜澄。
幼馴染の凸凹コンビの元哉との掛け合いと協力関係が面白く、二人の捜査に引き込まれていきます。
可愛いけど生意気な名探偵・亜澄の切れ味鋭い推理が楽しめる、新しい警察ミステリーの誕生です。

鳴神響一の警察ミステリーのポジショニングマップ

勝手に作者の警察ミステリーシリーズのポジショニングマップを作ってみました。
(主観ですが、作品選びの参考にどうぞ)

鎌倉署・小笠原亜澄の事件簿 稲村ヶ崎の落日

鳴神響一
文藝春秋 文春文庫
2022年10月10日第1刷

イラスト:けーしん
デザイン:野中深雪

●目次
プロローグ
第一章 文豪死す
第二章 UBAGAYA
第三章 封ぜられた秘密
エピローグ

本文252ページ

文庫書き下ろし

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『鎌倉署・小笠原亜澄の事件簿 稲村ヶ崎の落日』(鳴神響一・文春文庫)
『刑事特捜隊 伊達政鷹2 織姫の夜』(鳴神響一・小学館文庫)

鳴神響一|作品ガイド
鳴神響一|なるかみきょういち|時代小説・作家1962年、東京都生まれ。中央大学法学部卒。2014年、『私が愛したサムライの娘』で第6回角川春樹小説賞を受賞してデビュー。2015年、同作品で第3回野村胡堂文学賞を受賞。■時代小説SHOW 投稿...