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故内山先生に導かれるように、浄瑠璃作者近松半二の世界へ

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『近松半二 奇才の浄瑠璃作者』|早稲田大学坪内博士記念演劇博物館監修・原田真澄編著|春陽堂書店

近松半二 奇才の浄瑠璃作者早稲田大学坪内博士記念演劇博物館で2022年4月26日~8月7日の間に、2022年度春季企画展として開催された、「近松半二――奇才の浄瑠璃作者」の展示会図録、『近松半二 奇才の浄瑠璃作者』(春陽堂書店)を入手しました。

2022年8月3日に亡くなられた内山美樹子先生(浄瑠璃研究者・早稲田大学名誉教授)の訃報を知り、その演劇論に触れたくなりました。

 恐らく近松半二は、最も「ドラマチック」な浄瑠璃作者なのだと思います。
 近松門左衛門は人形浄瑠璃にドラマを樹立し、その内世話浄瑠璃は実に劇的密度が濃い。ただ、世話浄瑠璃はヨーロッパ的にいえば、市民劇的演劇の先駆といわれるべきものだと思います。半二の「ドラマチック」は、もう一つ前の時代の、いわゆるシェイクスピア的な演劇を連想させるものです。

(『近松半二 奇才の浄瑠璃作者』インタビュー「最もドラマチックな浄瑠璃作者――近松半二」P.94より)

近松半二の特徴を、ドラマチックな浄瑠璃作者といい、その作風は王者のドラマで、その頂点にあるのが「妹背山婦女庭訓」だと語っておられました。

近松半二と「妹背山婦女庭訓」の話は、大島真寿美さんが『渦 妹背山婦女庭訓 魂結び』で、上質な小説に仕立て上げています。

本書には大島さんと文楽の六代目豊竹呂太夫さんの対談も収録されています。
文楽との関りや執筆時のエピソードなどが明らかにされていていずれも興味深く、呂太夫師匠は文庫の解説も担当されていて、小説(文学)と文楽(演劇)を繋ぐ架け橋となっています。

 とにかく近松半二といえば小汚い恰好でも常に意気軒昂として、誇大妄想ぎみのハイテンションで変な理屈をいい散らかす、やかましくて妙に明るい大阪のオッチャン、というのが私の中ではっきりとイメージされている。

(『近松半二 奇才の浄瑠璃作者』寄稿「半二雑感」P.19より)

松井今朝子さんは、卒論で「近松半二論」を書かれたとのことで、ここにも一人、半二に惹きつけられた小説家がいることを知りました。

本書は、これまで敬して遠ざけてきた浄瑠璃(文楽)に、興味を持たせてくれた恩人のような一冊です。

近松半二 奇才の浄瑠璃作者

早稲田大学坪内博士記念演劇博物館監修・原田真澄編著
春陽堂書店
2022年5月10日初版第1刷発行

表紙:錦絵「八重垣姫」部分、錦絵「伊賀越道中双六」背景、浄瑠璃正本「妹背山婦女庭訓」七行本
裏表紙:錦絵「佐々木高綱」部分、浄瑠璃正本「妹背山婦女庭訓」七行本

●目次
巻頭口絵 人形浄瑠璃の世界
はじめに
展示趣旨
凡例

第一部 近松半二の魅力
寄稿 半二雑感 松井今朝子
対談 四位一体の共同幻想 豊竹呂太夫×大島真寿美(聞き手・児玉竜一)

第二部 近松半二の世界
第一章 浄瑠璃作者の系譜
第二章 近松半二作品図鑑
第三章 歌舞伎化の展開と同時代の演劇界
第四章 現代に生きる近松半二
附章 描かれた文楽人形

第三部 近松半二の作品と上演
インタビュー 最もドラマチックな浄瑠璃作者――近松半二 内山美樹子
近松半二の生涯と作風――附・近松半二年譜 原田真澄
歌舞伎のなかの近松半二 児玉竜一

第四部 資料編
近松半二の映像・音声資料――作品世界への道標 飯島満
近松半二主要参考文献 高井詩穂・原田真澄
近松半二作品正本所蔵リスト 高橋和日子・原田真澄・馬翹
展示リスト
謝辞

本文139ページ

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『近松半二 奇才の浄瑠璃作者』(早稲田大学坪内博士記念演劇博物館監修・原田真澄編著・春陽堂書店)
『渦 妹背山婦女庭訓 魂結び』(大島真寿美・文春文庫)
『江戸の夢びらき』(松井今朝子・文藝春秋)