戦国小説の名手二人が新境地で、一騎打ち
第11回日本歴史時代作家協会賞の「作品賞」の候補作2作品を紹介します。
対象となるのは、2021年6月から2022年5月刊行までの刊行作品となります。
候補に挙がったのは、以下の2作品です。
矢野隆(やのたかし)さんの『琉球建国記』は、集英社文庫より2022年4月に刊行されました。
文庫書き下ろし作品です。
著者は、2008年、「蛇衆綺談」で第21回小説すばる新人賞を受賞し、2009年同作を改題した『蛇衆』てデビュー。以降、戦国時代など、迫真の戦闘シーンや骨太のヒーローを描くことに定評があります。
本書は、15世紀の琉球。拳の力で若者たちをまとめあげていく叛逆のカリスマ、阿麻和利と、尚泰久のもとで、琉球王国統一を進めていく非情の側近・金丸。二人を軸に琉球王国の動乱を描く、歴史エンタメ長編です。
吉川永青(よしかわながはる)さんの『高く翔べ 快商・紀伊國屋文左衛門』は、中央公論新社から2022年5月に出ました。
著者は、2010年、『戯史三國志 我が糸は誰を操る』で第5回小説現代長編新人賞奨励賞を受賞し、翌年、作家デビュー。以降、『誉れの赤』など、独自の視点から、武将に迫る、戦国歴史小説を中心に活躍しています。
本書は、みかん船の伝説で知られる、江戸の豪商紀伊國屋文左衛門の生涯を描いた、歴史小説。文左衛門は、材木商として隆盛を極めながら、なぜ一代で店を閉じたのか。その波瀾に満ちた、生きざまに驚嘆を覚えます。
奇しくも戦国時代小説で傑作が多い二人の作家ですが、候補作品は得意なテーマを外して挑んだ新境地の作品となりました。
作品賞を受賞するのは、いずれの作品でしょうか? 選考会は8月6日(土)です。
気になる結果はこちら↓
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『琉球建国記』(矢野隆・集英社文庫)
『高く翔べ 快商・紀伊國屋文左衛門』(小栗さくら・講談社)