旬で面白い、可能性を秘めた新人作家の競演
第11回日本歴史時代作家協会賞の「新人賞」の候補作4作品を紹介します。
対象となるのは、デビューから3年以内の作家で、2021年6月から2022年5月刊行までの四六判作品になります。
単行本作品の新人賞である、この部門が最大の激戦区となっています。出版社が期待している、有望な新人たちの競演です。
候補に挙がったのは、以下の4作品です。
稲田幸久(いなだゆきひさ)さんの『駆ける 少年騎馬遊撃隊』は、角川春樹事務所より2021年10月に刊行されました。
毛利元就の次男吉川元春家を舞台に、馬の育成が得意な孤児小六が少年騎馬隊として活躍する戦国エンターテインメント小説。元就を敵と狙い、吉川軍の前に立ちはだかる猛将山中鹿之助幸盛の負のヒーローぶりも見どころ。
続編『駆ける2 少年騎馬遊撃隊』も発表され、期待される新人作家の一人です。
小栗さくら(おぐりさくら)さんの『余烈(よれつ)』は、講談社から2022年4月に出ました。
幕末を舞台に、中村半次郎、小栗忠順、武市半平太、土方歳三の生きざまや死にざまを描く4つの短編を収録しています。
歴史タレントと活躍中の著者の歴史への造詣と熱い想いがベースにあり、幕末という時代の激烈さがビンビン伝わる、デビュー作品集。
千葉ともこさんの『戴天(たいてん)』は、文藝春秋より、2022年5月に刊行されました。
玄宗皇帝に楊貴妃、安禄山……、日本人にもなじみのある中国唐の時代を舞台にした中国歴史エンタメ小説。
戦闘場面の臨場感、友情と裏切りの連続で、巧みに構成された物語世界に引き込まれます。
物語の構想力と描写力は、デビュー作の『震雷の人』よりもさらにパワーアップしています。
夜弦雅也(やげんまさや)さんの『高望の大刀(たかもちのたち)』は、日本経済新聞出版から2022年2月に出ました。
桓武天皇の曽孫で、平将門や平清盛の祖先となる、高望王(たかもちのおおきみ)を主人公に描く、平安エンタメ時代小説。史料の少ない人物に光を当てた、想像力豊かな歴史活劇です。高望は、王の矜持を抱きながら、愛する者のため、次々に襲う試練の連続を撥ね返していきます。
第13回日経小説大賞受賞作。
激戦の新人賞に輝くのは、いずれの作品でしょうか? 結果発表が待ち遠しいです。
大接戦の賞の行方はこちら↓
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『駆ける 少年騎馬遊撃隊』(稲田幸久・角川春樹事務所)
『余烈』(小栗さくら・講談社)
『戴天』(千葉ともこ・文藝春秋)
『高望の大刀』(夜弦雅也・日本経済新聞出版)