『戦端 武商繚乱記(一)』|上田秀人|講談社文庫
2022年7月11日から7月20日の間に、文庫で刊行される時代小説の新刊情報リスト「2022年7月中旬の新刊(文庫)」を掲載しました
今回は、講談社文庫から刊行される、上田秀人さんの文庫書き下ろし時代小説、『戦端 武商繚乱記(一)』を取り上げてみました。
2022年3月、「百万石の留守居役」シリーズ(講談社文庫)で、第7回吉川英治文庫賞を受賞した著者の最新シリーズです。
大坂・東町奉行所の同心、山中小鹿(やまなか・ころく)は、上役の筆頭与力・和田山の娘をわけがあることを承知で娶ったにもかかわらず、裏切られてしまう。妻の不貞を許せなかった小鹿は、義父の和田山に妻を公然と突っ返すという方法に及ぶ。これが原因で、東町奉行所内では、同僚たちからも距離を置かれて居心地がよくない日々を過ごしていた。
鬱憤をはらそうと大坂の遊郭に足を向けたものの、なぜか客引きをされない。理由は、大商家が「総揚げ」すべての見世を貸し切っていたからだ。その商家の名は、淀屋。西国三十藩以上の年貢米を大坂へ廻送、売る権利を持ち、莫大な富を得ていた。
淀屋に借金をする大名もあらわれ、参勤交代の折には淀屋に寄って挨拶をするほどの力関係に至る。幕府も忸怩たる思いで、ついに時の老中首座・土屋相模守が手を打つことに。
一介の同心・小鹿は、商魂たくましい上方の豪商と武士の沽券をかけた争乱に巻き込まれていく。
吉川英治文庫賞受賞作家が送る新機軸の書下ろし時代小説、堂々開幕!(『戦端 武商繚乱記(一)』(講談社文庫)Amazonの内容紹介より)
大坂の東町奉行所同心を主人公が、上方の豪商と武士の争乱に巻き込まれているという、新機軸が何とも楽しみです。
商都大坂を舞台に、武家でありながらも、大坂に土着し独自の価値観を持った町奉行所同心がどのように描かれていくか興味津々。
ちなみに土屋相模守が老中首座に就いたのは、元禄11年(1698)のことだそうですので、将軍綱吉の時代が舞台。
吉川英治文庫賞は、5巻以上続くシリーズ大衆小説のうち、12月1日から翌年11月30日までに5巻目以降が一次文庫で刊行されたものを対象にし、2016年に創設されました。
これまでに、時代小説では、第1回に畠中恵さんの「しゃばけ」シリーズ(新潮文庫)、第6回に今村翔吾さんの「羽州ぼろ鳶組」シリーズ(祥伝社文庫)が受賞しています。
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『戦端 武商繚乱記(一)』(上田秀人・講談社文庫)
『波乱 百万石の留守居役(一)』(上田秀人・講談社文庫)
『しゃばけ』(畠中恵・新潮文庫)
『火喰鳥 羽州ぼろ鳶組』(今村翔吾・祥伝社文庫)