『熱源』|川越宗一|文春文庫
2022年7月1日から7月10日の間に、文庫で刊行される時代小説の新刊情報リスト「2022年7月上旬の新刊(文庫)」を掲載しました
今回は、文春文庫から刊行される、川越宗一さんの長編歴史時代小説、『熱源』を取り上げてみました。
著者は2020年、この作品で第162回直木賞を受賞されました。
樺太(サハリン)で生まれたアイヌ、ヤヨマネクフ。開拓使たちに故郷を奪われ、集団移住を強いられたのち、天然痘やコレラの流行で妻や多くの友人たちを亡くした彼は、やがて山辺安之助と名前を変え、ふたたび樺太に戻ることを志す。
一方、ブロニスワフ・ピウスツキは、リトアニアに生まれた。ロシアの強烈な同化政策により母語であるポーランド語を話すことも許されなかった彼は、皇帝の暗殺計画に巻き込まれ、苦役囚として樺太に送られる。
日本人にされそうになったアイヌと、ロシア人にされそうになったポーランド人。
文明を押し付けられ、それによってアイデンティティを揺るがされた経験を持つ二人が、樺太で出会い、自らが守り継ぎたいものの正体に辿り着く。(『熱源』(文春文庫)Amazonの内容紹介より)
樺太を舞台に、明治から大正にかけて激動の時代を生きた、実在の樺太アイヌ、ヤヨマネクフ(日本名:山辺安之助)の生涯を描いた歴史冒険小説です。
ポーランド人のブロニスワフ・・ピウスツキは、リトアニアに生まれ、ロシア皇帝の暗殺計画に巻き込まれたことで、苦役囚として樺太に送られました。
家族を失ったヤヨマネクフは、ポーランド人でアイヌ文化を研究するブロニスワフ・ピウスツキとの出会いによって、アイヌとしての生き方に目覚めていきます。
明治の文明開化政策とロシア革命を背景にした、読み応えのある作品です。
連日、35度を超える暑さのなか、文庫化される本書を手に取り、樺太の寒さを想像するとともに、民族に対する「熱」に触れてみたいと思います。
■Amazon.co.jp
『熱源』(川越宗一・文春文庫)