月の晴れたある日、江東区大島にある中川船番所資料館を訪れました。
小名木川は、徳川家康が最初に開削した運河で、隅田川と中川をつなぐ、幕府にとって重要な水路でした。
正保四年(1647)に小名木川の西端、隅田川口にあった深川番所が、寛文元年(1661)に東端のこの地に移転してできたのが中川番所です。
関東、東北南部を含む地域の水系を「奥川筋」といいますが、そこにつながっていて、江戸に出入りする船は、必ず中川船(舟)番所で検査を受けることになっていました。
歌川広重の「名所江戸百景 中川口」にも描かれ、明治二年(1869)に廃止されるまで、川の関所の役目を果たしていました。
常設展では、番所周辺を実物大のジオラマで再現して、当時の様子がよくわかります。
船番所には、三千石以上の寄合の旗本が、交代で勤務していました。
企画展では、「「江戸名所図会」で巡る江東」というテーマで、「中川口(中川番所)」をはじめとして、「江戸名所図会」で描かれている江東区内の風景を紹介しています。
また資料館の受付で、江東区が編集した区内の史跡・文化財を紹介するガイドブック『増補 史跡をたずねて ―第四版―』を入手しました。
約170カ所が掲載されていて、史跡巡りに役立ちそうです。
中川舟番所が登場する時代小説を紹介しましょう。
諸田玲子さんの『幽恋舟』は、中川舟番所の御番衆を務める旗本が主人公をつとめています。
平岩弓枝さんの『はやぶさ新八御用帳(六) 春月の雛』では、「中川舟番所」の話が収録れています。隼新八郎の新しい友、旗本落合清四郎が、中川舟番所のお役目に就くこととなり……。
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『幽恋舟』Kindle版(諸田玲子・新潮文庫)
『新装版 はやぶさ新八御用帳(六) 春月の雛』(平岩弓枝・講談社文庫)