シェア型書店「ほんまる」で、「時代小説SHOW」かわら版を無料配布

元SISのハルトラマンが台風迫る西丹沢で捜査、格闘、救助

アドセンス広告、アフィリエイトを利用しています。
スポンサーリンク

『SIS 丹沢湖駐在 武田晴虎III 創生』|鳴神響一|ハルキ文庫

SIS 丹沢湖駐在 武田晴虎III 創生鳴神響一(なるかみきょういち)さんの文庫書き下ろし警察小説、『SIS 丹沢湖駐在 武田晴虎III 創生』(ハルキ文庫)を紹介します。

誘拐・人質救出のプロである、神奈川県警特殊捜査係SISの第四班長から、西丹沢の駐在の“おまわりさん”に転身した武田晴虎が活躍する、アクション警察小説の第3弾です。

西丹沢で危険人物の目撃情報が寄せられた。熊のようなその大男は何かを捜しにきているようで、人が近づくと威嚇してくるという。地域の平和を守るため、丹沢湖駐在の武田晴虎は巡廻を強化するが、一方で後輩の江馬刑事から茅ヶ崎で起きた人気小説家殺人事件の相談を受ける。元神奈川県警捜査一課特殊捜査係、SISの猛者だった晴虎の捜査で男と事件の繋がりが徐々に見えてくる中、丹沢に台風が近づいて――。心躍る新警察小説!

(『SIS 丹沢湖駐在 武田晴虎III 創生』カバー裏の紹介文より)

九月の台風が通り過ぎた翌日、猛暑に見舞われた西丹沢で、武田晴虎警部補は、北川地区に住んでいる小学生三人組(甘利泰文・土屋昌弘・浅利寛之)の訪問を受けました。

「ハルトラマンに退治してほしいヤツがいるんだ」
 昌弘が息巻いた。
「退治とは穏やかじゃないな……まぁ、なかに入って」
 晴虎が招じ入れると、三人は素直に駐在所の建物に入った。

(『SIS 丹沢湖駐在 武田晴虎III 創生』P.22より)

三人は、クマのようにデカくて腕も足もぶっとい男にすごい怖い目で睨みつけられたと訴えました。晴虎は子どもたちを怖がらせる者は放っておけないと、北川温泉付近のパトロールを強化することを約束しました。

熊男は子どもたちばかりか、北川館の仲居や『ニレの湯』のスタッフやお客さんにも、「見てんじゃねえよ」とか「なんか文句あんのか」と言って凄み怖がらせていました。
男は身長一八〇センチくらいの筋骨隆々の大男で、五十代くらい。

北川館の女将の甘利雪枝から、話を聞いた範囲では脅迫罪として立件できるかどうか微妙な事案でしたが、パトロールを強化して、もし出会ったら必ず職務質問を掛けてみると言いました。

その翌日、かつての部下で、神奈川県警捜査一課の警部補江馬がアポを取って駐在所に顔を出しました。
半年以上経ち、これといった手がかりがない殺人事件に知恵を貸してほしいと。

「被害者は何者なんだ?」
「小説家です。まぁ、そこそこ売れていたみたいです」
「聞いたことない名前だな。ジャンルはなんだ?」
「おもに警察小説とミステリみたいです」
「俺はミステリはよく読むけど、知らないなぁ」

(『SIS 丹沢湖駐在 武田晴虎III 創生』P.61より)

事件が発覚したは今年の二月十三日で、藤沢市の辻堂西海岸の砂浜に死体が漂着しているのを発見されました。
被害者は茅ヶ崎市内に居住する成山祐一という五十五歳の男性の小説家です。二作しか出していない新人に近い人ながら、二〇一七年に『トモ犬マーサ』で、高木彬光文学賞を受賞し、テレビドラマ化され、一〇万部のベストセラーとなったそう。

今回の読みどころの一つは、成山がデビュー前に通っていた小説教室の話。
そこえの人間模様にリアリティがあって、興味深く読み進められました。

風光明媚な西丹沢の地で、SISの班長だった晴虎が見せる、凶悪な犯人との格闘シーン、暴風雨の中で決死の山岳救出劇など、今回もハラハラドキドキのアクションシーンの連続から目が離せません。

SIS 丹沢湖駐在 武田晴虎III 創生

鳴神響一
角川春樹事務所 ハルキ文庫
2022年5月18日初版第一刷発行

写真:Buena Vista Images/ Photodisc/ゲッティイメージズ
装幀:bookwall

●目次
序章 救難
第一章 熊男
第二章 殺人
第三章 確保
第四章 創生

本文210ページ

文庫書き下ろし

■Amazon.co.jp
『SIS 丹沢湖駐在 武田晴虎』(鳴神響一・ハルキ文庫)(第1作)
『SIS 丹沢湖駐在 武田晴虎II 聖域』(鳴神響一・ハルキ文庫)(第2作)
『SIS 丹沢湖駐在 武田晴虎III 創生』(鳴神響一・ハルキ文庫)(第3作)

鳴神響一|作品ガイド
鳴神響一|なるかみきょういち|時代小説・作家 1962年、東京都生まれ。中央大学法学部卒。 2014年、『私が愛したサムライの娘』で第6回角川春樹小説賞を受賞してデビュー。 2015年、同作品で第3回野村胡堂文学賞を受賞。 ■時代小説SHO...