『北の御番所 反骨日録【四】 狐祝言』|芝村凉也|双葉文庫
芝村凉也(しばむらりょうや)さんの文庫書き下ろし時代小説、『北の御番所 反骨日録【四】 狐祝言』(双葉文庫)紹介します。
本書は、道理に合わなければ上役にも臆せずに物申し、周囲からは「やさぐれ」とも評される北町奉行所同心裄沢広二郎(ゆきざわこうじろう)を主人公にしたシリーズ第四作です。
捕物ばかりでなく、奉行所内外の出来事や人間関係を描く、「警察小説」ならぬ「奉行所小説」ともいうべき作品。
「時代小説SHOW」でも2021年度の「文庫書き下ろしランキング」の第3位に推した、お気に入りのシリーズの最新刊です。
なんと、新刊の帯にも、「時代小説SHOW」の「第3位」の文字を入れていただきました。
上役に暴言を吐いて三日間の謹慎処分を受けた裄沢広二郎は、盟友の来合轟次郎と美也の婚礼の儀が近づく中、その準備が遅々として進んでいないことを案じていた。大奥から戻って以来、美弥が本所の備前屋に仮寓したまま親元に帰らないこともあり、実家の坂木家に幾度となく出席者を問い合わせても梨の礫。祝言の段取りをつけるため備前屋の主とともに訪れた坂木家で、心無い言葉を耳にした裄沢は――。道理に合わなければ誰であろうと臆せず物申す裄沢の友情と奮闘を描く、痛快にして万感胸に迫る書き下ろしシリーズ第四弾!
(『北の御番所 反骨日録【四】 狐祝言』カバー裏の紹介文より)
前作『蝉時雨』で描かれた事件で、上役に暴言を吐いた裄沢は三日間の謹慎処分を受け、その日、四日ぶりに勤め先である北町奉行所の表門を潜りました。
裄沢はそれまでの定町廻りの役を解かれ、以前の用部屋手附同心に戻りましたが、上司の内与力には倉島惣左が就いていました。
就任早々で手柄を挙げたい倉島は、裄沢にあることを命じますが……。
父が何か呟いたのを耳にして、思わず目をやる。
勘之丞は息子の視線に気づかず、何の用があるのか部屋を出ていった。
「いざとなれば、あんな者の行う祝言など潰してしまえばよい」
部屋を出る前の父の呟きは、六郎太の耳にそう聞こえていた。
(『北の御番所 反骨日録【四】 狐祝言』 P.87より)
美也の父で、南町奉行所定橋掛与力の坂木勘之丞と、見習い与力として出仕を始めた嫡男の六郎太は、轟次郎との婚礼に反対でした。
十年前に轟次郎との縁談がなかった話にされ、老中首座松平定信の推挙により、将軍の側室候補として大奥に上がった美也。
娘が将軍の側室となって寵愛されれば出世の道も拓かれると大いに期待していた勘之丞は、美也が側室候補となることなく、十年が経ち大奥を出たことに納得ができず、不愉快な思いを抱いていました。
本書の読みどころの一つは「狐祝言」の話。裄沢が手掛けたのは捕物劇ではなく、花嫁の父の強力な反対のもとで、親友の轟次郎と美也の祝言を執り行うことでした。
「主持ちの武家やその子女が婚姻を結ぶ際には、まず上役に願い出て許可を得なければならない」という大きな壁がありました。
賂(まいない)や嫉妬、足の引っ張り合い、複雑な奉行所内のリアルな人間模様が描かれる、「奉行所小説」シリーズの第4弾。
裄沢がち密な論理展開で相手を論破するのが面白く、斬った張ったの少ない地味なテーマながら、読み味が良く、癖になる面白さがあります。次巻が待ち遠しくてなりません。
北の御番所 反骨日録【四】 狐祝言
芝村凉也
双葉社・双葉文庫
2022年4月17日第1刷発行
カバーデザイン・イラスト:遠藤拓人
●目次
第一話 宴のあと
第二話 狐祝言
第三話 まいない新三郎
第四話 秋日和
本文318ページ
文庫書き下ろし。
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『北の御番所 反骨日録【一】 春の雪』(芝村凉也・双葉文庫)(第1作)
『北の御番所 反骨日録【二】 雷鳴』(芝村凉也・双葉文庫)(第2作)
『北の御番所 反骨日録【三】 蝉時雨』(芝村凉也・双葉文庫)(第3作)
『北の御番所 反骨日録【四】 狐祝言』(芝村凉也・双葉文庫)(第4作)