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被害者は、夏希が関わった事件で国会議員を辞めた男だった

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『脳科学捜査官 真田夏希 クリミナル・ブラウン』|鳴神響一|角川文庫

脳科学捜査官 真田夏希 クリミナル・ブラウン鳴神響一(なるかみきょういち)さんの文庫書き下ろし現代ミステリー、『脳科学捜査官 真田夏希 クリミナル・ブラウン』(角川文庫)を紹介します。

「脳科学捜査官 真田夏希」シリーズの2カ月連続刊行の2か月目にあたる本書は、神奈川県警で心理職特別捜査官、真田夏希が活躍する警察小説シリーズの第12弾です。

神奈川県警の心理分析官・真田夏希の許に、奇妙なプレゼントが届けられた。送り主は、刑事部捜査一課長の福島の名を騙り、中には、見覚えのある衣装を着た人形が入っていたのだ。何者かが脅そうとしているのか。身の危険を感じる夏希をよそに、横須賀で遺体が発見され、彼女は捜査本部に招集されることになる。だが、そこでさらなる衝撃が夏希を襲う。被害者は、以前夏希が捜査に関わった事件で国会議員を辞職した男だった――。

(本書カバー裏紹介より)

2021年2月1日、真田夏希のもとに、覚えのない宅配便が届きました。伝票には、(福島正一様よりの贈り物)と印字されて、中には大人向けの着せ替え人形が入っていました。
しかも見覚えある衣装を着けていました。

薄気味悪い人形の送り主は、県警刑事部の捜査一課長のはずがなく、福島の名を騙って何者かが送り付けてきたものでした。

翌日、夏希は、三階級も上の福島捜査一課長と何とか連絡を取りましたが、福島には心当たりはなく、逆に人形が送られて来ただけでは、送り主を罪に問うことができず、捜査もできないと諭されました。

ところが、その夜再び、送り主「福島正一」で、夏希の許に人形が着せ替え人形が届きました。不安がますます募りました。

その翌日、横須賀署に捜査本部が立てられ、夏希に招集がかかりました。
捜査本部に着くと、早速、顔なじみの警備部管理官の小早川から、捜査の指揮を執る芳賀管理官を紹介されました。

四〇代前半くらいで、なかなかの美形ですらっとした体形でスタイルも良く、警察官というよりは、大企業で責任ある地位に就いて精力的に部下を引っ張っている女性という雰囲気の芳賀管理官。

ノンキャリアながら実力派の芳賀は、神経科学で博士号をもつ夏希に、一方的にライバル心を見せていきます。

「それではわたしから事件の背景を説明する。昨日の朝、荒崎海岸に男性の遺体が漂着した。遺体は元衆議院議員の宍戸景大さん、四〇歳だ」
 夏希は「えっ!」と声を上げそうになった。

(『脳科学捜査官 真田夏希 クリミナル・ブラウン』P.37より)

夏希が捜査に関わった、アイドルグループ、オレンジ☆スカッシュをめぐる事件によって、議員を辞職した男でした。
事件の顛末は、シリーズ第6巻の『脳科学捜査官 真田夏希 パッショネイト・オレンジ』で詳しく描かれています。

宍戸は、事件後、荒崎海岸に近い自宅で隠遁生活を送っていましたが、前日の午後六時頃、家族に『飲みに行く』といって出かけて、翌朝も帰宅していなかったとのこと。頸部の圧迫痕により絞殺と判断され他殺の疑いが浮上しましたが、遺体は財布と免許証を所持していて、物取りの犯行とは考えられません。

宍戸はいろいろと問題の多い人物で、動機を持つ者は多く、事件はいろいろな筋が考えられる中、SNSに犯行声明が投稿され、夏希の出番となりました……。

今回は、SNSで犯人の心理分析をする夏希に対して、捜査の主導権を握り、マウントを取りに行くような言動をする芳賀捜査官の存在が面白く、刑事ドラマのようです。

「まぁ、芳賀って女は、真田の恐ろしさを知らないからな」
 上杉は低い声で笑った。」
「なんです? わたしの恐ろしさって?」
「真田って、異常にカンがいいだろ。捜査が始まって間もないのに、捜査本部とまったく違った方向を向いてて、結局は真犯人に辿り着いちまうじゃないか。なんて言うか、神の啓示って言うの? もはやシャーマンって言うか」

(『脳科学捜査官 真田夏希 クリミナル・ブラウン』P.83より)

心理分析官としての夏希の成長を見守り、一緒に事件を解決していく、先輩・同僚の捜査官たちとの一体感が何とも心地よいのも、このシリーズの魅力の一つです。すっかり、真田組のファンになりました。

さて、次はどんなドラマが待っているのでしょうか?

脳科学捜査官 真田夏希 クリミナル・ブラウン

鳴神響一
KADOKAWA 角川文庫
2022年2月25日初版発行

文庫書き下ろし

カバー写真:Wangwukong/ Stone/ Getty Images
カバーデザイン:舘山一大

●目次
第一章 ジュリエンヌ
第二章 エクスカリバー
第三章 オレンジ・モンキーズ

本文266ページ

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『脳科学捜査官 真田夏希』(鳴神響一・角川文庫)(第1弾)
『脳科学捜査官 真田夏希 パッショネイト・オレンジ』(鳴神響一・角川文庫)(第6弾)
『脳科学捜査官 真田夏希 クリミナル・ブラウン』(鳴神響一・角川文庫)(第12弾)

鳴神響一|作品ガイド
鳴神響一|なるかみきょういち|時代小説・作家 1962年、東京都生まれ。中央大学法学部卒。 2014年、『私が愛したサムライの娘』で第6回角川春樹小説賞を受賞してデビュー。 2015年、同作品で第3回野村胡堂文学賞を受賞。 ■時代小説SHO...