『SIS 丹沢湖駐在 武田晴虎II 聖域』|鳴神響一|ハルキ文庫
鳴神響一(なるかみきょういち)さんの文庫書き下ろし警察小説、『SIS 丹沢湖駐在 武田晴虎II 聖域』(ハルキ文庫)をご恵贈いただきました。
誘拐・人質救出のプロである、神奈川県警特殊捜査係SISの第四班長だった、西丹沢の駐在の“おまわりさん”武田晴虎が活躍する、アクション警察小説の第2弾です。
松田警察署地域課丹沢湖駐在“おまわりさん”武田晴虎。元神奈川県捜査一課特殊捜査係、通称SISの第四班長だった彼だが、今は平和で美しい丹沢を守るために地域に根差して活動している。そんな丹沢に、落ち武者の亡霊の目撃談が続出した。観光のイメージダウンにもなってしまう、と晴虎は捜査を開始するが……。格闘、救出、カーアクションとエンターテインメント満載の、新警察小説!
(『SIS 丹沢湖駐在 武田晴虎II 聖域』カバー裏の紹介文より)
武田晴虎警部補は、その日も西丹沢登山センターから北川温泉付近を巡回して、途中でパンクしてバス停を塞いでいた高級SUV車のタイヤ交換を手伝って移動させたりして、丹沢駐在所に戻ってきました。
「帰ってきた」
「ハルトラマンだ」
「待ってたよぉ」
子どもたちは口々に叫んで、晴虎のところへ駆け寄ってくる。(『SIS 丹沢湖駐在 武田晴虎II 聖域』P.20より)
六月に川の岩場に取り残されたところを救助した、北川温泉北川館の一人息子の甘利泰文と、その二人の友だちが、駐在所の前で待っていました。いずれも地元の小学校の五年生で、三人は昨日の晩に、心霊スポットになっている中川隧道に肝試しに行って、そこで幽霊を見たと言いました。白い着物を着た幽霊で、禿げてるロン毛の姿で、刀を持っていたとも。
晴虎は、子どもたちのいうことを信じて、幽霊退治のため、中川隧道を巡回ルートに入れて、夜のパトロールの強化を約束しました。
「そうなのですが、ちょっと困ったことが起きてしまいまして……」
雪枝は帯に挟んでいたスマホを取り出してタップすると、端末を晴虎に渡した。
――亡霊温泉、北川温泉。二度と行くか!
晴虎の目にいきなり過激な言葉が飛び込んできた。(『SIS 丹沢湖駐在 武田晴虎II 聖域』P.55より)
その大手SNSへ投稿は、北川温泉に泊まったら、駐車場に三人の落ち武者が出たと続けられていて、雰囲気最悪、二度と行くか!と続けられていました。
投稿には、3000を超える、いいね!と200くらいのシェアがあり、かなり拡散されていました。
投稿が原因で、北川館では2件のキャンセルの実害も出始め、女将の雪枝から、投稿を止めさせることができないか、相談を受けました。
晴虎は、投稿を止めさせるための捜査はできないが、亡霊の正体を突き止めるためにパトロールをすることを約束しました。
登山センターの秋山らの協力を得て、亡霊の正体を突き止め、解決したかと思われた事件は意外な展開を見せました。
――武田信玄が北条氏から奪った金が眠る湯ノ沢城南の洞穴
(『SIS 丹沢湖駐在 武田晴虎II 聖域』P.249より)
山北町内には、湯ノ沢城、中川城、大仏城、河村城と後北条氏の四つの城がありました。晴虎は、ネットを検索して、天正九年(1581)に武田勝頼に攻められて落城した際に、河村城から大量の金銀が奪われ、武田方の重臣長坂光堅(釣閑斎)によって、湯ノ沢城近くに隠されたという伝説を見つけました。
落ち武者、後北条氏の城、武田の隠し金と、戦国歴史ファンが引き込まれそうな題材も散りばめられいます。
謎が深まる中で、北川温泉に映画のロケ隊もやってきて、物語は佳境に入っていきます。
犯人との格闘、決死の救出劇、カーチェイスと、今回もハラハラドキドキのアクションが満載で、読みだしたら止められない、エンターテインメント警察小説です。
タイトルに付けられた「聖域」に込められた意味がわかったとき、甘く切なく、どこか懐かしい、そんな思いが満ちてきました。
SIS 丹沢湖駐在 武田晴虎II 聖域
鳴神響一
角川春樹事務所 ハルキ文庫
2021年11月18日初版第一刷発行
写真:Joe Klementovich/gettyimages
装幀:bookwall
●目次
序章 青い夜
第一章 西丹沢の亡霊
第二章 北川温泉に憂鬱
第三章 朝日さし夕日輝く
第四章 激闘!
第五章 聖域
本文399ページ
文庫書き下ろし
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『SIS 丹沢湖駐在 武田晴虎』(鳴神響一・ハルキ文庫)(第1作)
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