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『鎌倉殿の13人』を取り巻く世界を描く、名手たちの短編集

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『傑作! 名手たちが描いた 小説・鎌倉殿の世界』|安部龍太郎、岡本綺堂・永井路子・山本周五郎・火坂雅志・坂口安吾|宝島社文庫

傑作! 名手たちが描いた 小説・鎌倉殿の世界安部龍太郎、岡本綺堂・永井路子・山本周五郎・火坂雅志・坂口安吾、各氏によるアンソロジー、『傑作! 名手たちが描いた 小説・鎌倉殿の世界』をご恵贈いただきました。

本書は、2022年のNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』に照準を合わせ、同時代を描いた傑作短編6編を収録したアンソロジーです。鎌倉殿とは源頼朝から始まる鎌倉幕府の棟梁および、鎌倉幕府自体を指す言葉。

2022年のNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』の主人公は鎌倉幕府執権・北条義時。打倒平氏を果たし、史上初の武士政権(幕府)を打ち立てた源頼朝に仕え、死後も「13人の合議制」のリーダーとして幕府を強固な組織とした。しかしその道のりは、謀略・謀反・暗殺など、身内同士で血を流し合う陰惨なものだった。その過程の人間模様を描いた、時代小説の名手たちによる傑作を集めたアンソロジー。

(本書カバー裏の内容紹介より)

「木曽の駒王」は、安部龍太郎さんのデビュー作、『血の日本史』に収載された短編。木曽義仲の異名をタイトルにして、愛妾巴との逢瀬が描かれています。重いテーマが並ぶ『血の日本史』の中で、爽やかさで光彩を放っています。

読後に得も言われぬ余韻が残るのが、山本周五郎さんの「義経の女」です。
本編の発表されたのが少女雑誌「少女之友」昭和18年12月号ということを知ると、媒体と時期に大きな驚きがあります。

岡本綺堂さんの「修禅寺物語」は、戯曲にもなった名編。幻想的な物語で、二代将軍源頼家の悲劇性はさらに胸を打ちます。

歴史時代小説の名手、火坂雅志さんの『源氏無情剣』からの一編。
骨肉の争いの中で台頭し、果てていく幻の四代将軍平賀朝雅が描かれています。

 荒々しい平賀氏の家風のなかで育った朝雅は、乗馬、弓箭、刀術、早業にすぐれ、先祖新羅三郎義光の再来ではないかとまでいわれた。
 北条時政は、武勇にひいでた若武者朝雅に目をかけ、
「あれこそまことの源氏武者じゃ」
 と、牧ノ方とのあいだに生まれた末娘の泰子を嫁がせたのである。
 
(本書「幻の将軍」P.132より)

永井路子さんは、昭和54年(1979年)の大河ドラマ「草燃える」の原作者で、鎌倉歴史小説の第一人者です。
直木賞受賞作『炎環』から、北条義時を描いた「覇樹」を掲載。

「安吾史譚 源頼朝」は、若き日の頼朝の人物像を、著者独自の視点から、諧謔性に富んだ講談調で談じています。

鎌倉将軍家三代をはじめ、義経や範頼ら頼朝の兄弟たち、鎌倉幕府の有力御家人たちまで。実に多くの鎌倉武士たちが戦だけでなく、鎌倉殿の猜疑心や権力闘争の末に、命を落としています。

六つの作品は、作者はもちろん、執筆された時代も異なり、それぞれの視点から、鎌倉殿の時代を描いています。

今回、巻末の解題(解説)を担当させていただきました。

原稿執筆のために収載された六編を読み直してみて、「鎌倉殿」の時代が魂を揺すぶるような荒ぶる時代で、武士なら生き抜くことが難しい時代であったことを再認識しました。

兄弟や一族さえも絶滅させねば生きられぬ
荒ぶる鎌倉武士の血と魂を描出した傑作ぞろい!
 
(『傑作! 名手たちが描いた 小説・鎌倉殿の世界』カバー帯より)

といった、キャッチフレーズを考えて、本書を推薦しました。

こんなに面白い鎌倉時代ですが、歴史時代小説の短編は少なく、鎌倉殿の世界をテーマにアンソロジーを編むことも難しいことと思っていました。

文芸評論家の細谷正充さんがセレクションした、『鎌倉燃ゆ 歴史小説傑作選』(PHP文芸文庫)では、気鋭の作家の書き下ろしのオリジナル作品を加えることで、新味を出し、テーマ性を高めていました。

こちらもおすすめです。

傑作! 名手たちが描いた 小説・鎌倉殿の世界

安部龍太郎、岡本綺堂・永井路子・山本周五郎・火坂雅志・坂口安吾
宝島社・宝島社文庫
2021年11月19日 第1刷発行

カバーイラスト:宇野信哉
カバーデザイン:門田耕侍

目次
鎌倉殿・源頼朝から北条義時への政権移動
『血の日本史』より
木曽の駒王/奥州征伐  安部龍太郎
義経の女  山本周五郎
修禅寺物語  岡本綺堂
幻の将軍  火坂雅志
覇樹  永井路子
安吾史譚 源頼朝  坂口安吾
解題  理流

本文302ページ

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『鎌倉燃ゆ 歴史小説傑作選』(細谷正充編・PHP文芸文庫)

安部龍太郎|時代小説ガイド
安部龍太郎|あべりゅうたろう|時代小説・作家 1955年、福岡県生まれ。 1990年、『血の日本史』でデビュー。 2005年、『天馬、翔ける』で第11回中山義秀文学賞受賞。 2013年、『等伯』で第148回直木賞受賞。 ■時代小説SHOW ...