『星夜航行(上)(下)』|飯嶋和一|新潮文庫
2021年9月21日から9月30日の間に、文庫で刊行される時代小説の新刊情報リスト「2021年9月下旬の新刊(文庫)」を掲載しました。
今回は、飯嶋和一さんの長編歴史時代小説、『星夜航行(上)(下)』(新潮文庫)を取り上げてみました。
本書は、2018年「週刊朝日」歴史・時代小説ベスト10の第1位、「本の雑誌」2018年度時代小説ベスト10の第1位など、各紙誌で絶賛を浴び、この度、文庫化されます。
天正3(1575)年、三河国下和田村の馬飼い・甚五郎は、類稀なる馬扱いで家康の嫡男・三郎信康の小姓に取り立てられる。祖父と父はかつて家康に反旗を翻し、甚五郎は逆臣の遺児として慎ましく暮らしてきたのだった。だが、武士としての日々も長くは続かず、家康の命により三郎信康は自害。甚五郎は出奔し、堺、薩摩、そして博多へ――。歴史小説の巨星が掘り起こす不屈の男の数奇な運命とは。
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(『星夜航行(上) (新潮文庫)』Amazonの内容紹介より)
豊臣秀吉の朝鮮出兵を描いた歴史時代小説です。
主人公の沢瀬甚五郎は、家康に背き一向一揆に加わった家に生まれ、その後許され嫡男の三郎信康に小姓として仕えますが、罪なく徳川家を追われます。
商人となり、堺、薩摩、博多、呂宋と海外交易で成功を収めながら、秀吉の天下統一、朝鮮出兵という歴史の波に翻弄されていきます。
物語では朝鮮での戦いが克明に記されています。侵略される側の苦難と悲惨さ、侵略する武将たちの無力感、秀吉の老醜ぶりが浮き彫りになっていく、圧巻の歴史小説です。
時代の激流の中、甚五郎の凛とした生き様が一服の爽快感を与えます。
文庫化を機に読み直して、初めて読んだ時の感動を再び味わいたいと思います。
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『星夜航行(上)』(飯嶋和一・新潮文庫)
『星夜航行(下)』(飯嶋和一・新潮文庫)