『徳川幕府の資金繰り』|安藤優一郎|彩図社
歴史家、安藤優一郎さんの歴史読み物、『徳川幕府の資金繰り』(彩図社)をご恵贈いただきました。
『大名格差 江戸三百藩のリアル』で、徳川幕府の大名統制の実態を、様々な基準での格付けという視点から解き明かした著者。
本書では、財政の面から徳川幕府の歴史と江戸時代の真実に迫っていきます。
豊かな財政を誇った徳川幕府も、資金繰りには悩まされていた。
将軍の浪費、インフラ整備、相次ぐ災害、鉱山経営の停滞……。時代を経るにつれて歳入は頭打ちになるも、支出の増大の止まらない。将軍や歴代の財政当局は支出を減らし、あの手この手で歳入を増やそうと知恵を絞るも……。
財政難を背景に幕府が資金繰りに奔走した歴史を、五つの時代に分けて解明。
財政からみた徳川幕府の歴史、そして江戸時代の真実に迫る。(本書カバー裏紹介より)
徳川家康が開いた江戸幕府は、鎌倉幕府や室町幕府に比べると、強力な軍事力を背景に絶対的な権力を誇りましたが、それは豊かな財政基盤なくしてありえません。
しかし、徳川幕府も歳入が頭打ちとなったにもかかわらず、支出の増大が止まらず、やがて財政難に苦しむようになりました。
本書は、幕府が財政難を背景に資金繰りに奔走した歴史を、次の五つの時代に分けて明らかにするものである。
第一章「日本一の資産家徳川家」では、徳川家を将軍として君臨させた幕府の豊かな財源に焦点を当てる。400万石と称された全国各地の直轄領から徴収する年貢米に加えて、鉱山から産出した豊富な金・銀・銅が二大財源だった。
第二章「財政難のはじまり」では、家康以来の豊かな財政状況が一転、悪化に陥った原因を探る。5代将軍綱吉に象徴される華やかな元禄時代とは幕府の歳出が大幅に増加した時代でもあった。
(後略)(『徳川幕府の資金繰り』「はじめに」P.2より)
第三章では財政再建に取り組む、8代将軍吉宗の秘策に、第四章では諸大名に負担を転嫁して、挫折に追い込まれた天保の改革を迫ります。
そして、第五章では、歳出が飛躍的に増大した幕末の財政破綻を追います。
五つの時代の様々な出来事やエピソードを通じて、財政面から徳川幕府の歴史を解説していきます。
勘定所の仕事内容や、約400万石と言われる幕府直轄地からの年貢収集、金銀山の運営管理、通貨の鋳造と改鋳などの仕組みがわかりやすく解説されています。時代小説の背景に描かれながらも、わかりづらいテーマだったので、本書で興味深く学ぶことができました。
『おれは一万石』の高岡藩もぶっ飛ぶ、お金集めの策略いろいろが面白いです。
徳川幕府の資金繰り
安藤優一郎
彩図社
2021年8月18日 第1刷
カバー・扉ページイラスト:倉永和恵
●目次
はじめに
序章 家康はいかにして富を蓄えたのか
全国の幕領地図
第一章 日本一の資産家徳川家
第二章 財政難のはじまり
第三章 財政再建に取り組む
第四章 財政負担をおしつける
第五章 外圧が招いた財政破綻
本文223ページ
■Amazon.co.jp
『徳川幕府の資金繰り』(安藤優一郎・彩図社)
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『おれは一万石』(千野隆司・双葉文庫)