『初詣で 照降町四季(一)』|佐伯泰英|文春文庫
2021年4月1日から4月10日の間に、文庫で刊行される時代小説の新刊情報リスト「2021年4月上旬の新刊(文庫)」を掲載しました。
今回は、佐伯泰英さんの文庫書き下ろし時代小説、『初詣で 照降町四季(一)』(文春文庫)を取り上げてみました。
文政11年暮れ。雪の降る中、18で男と駆け落ちした鼻緒屋の娘・佳乃が三年ぶりに照降町に戻ってきた。懐かしい荒布橋(あらめばし)を渡り、町の入り口に立つ梅の木を、万感の思いで見上げる佳乃。
実家の鼻緒屋では、父が病に伏せっており、九州の小藩の脱藩武士・周五郎を見習いとして受け入れていた。父にかわり、職人として鼻緒挿げの腕を磨く佳乃は、新鮮なアイデアを出して老舗の下駄問屋の宮田屋に認められ、吉原の花魁・梅香からも注文を受ける。
自分を受け入れてくれた町に恩返しをすべく、日々を懸命に生きる佳乃だったが、駆け落ちの相手・三郎次があとを追ってきて――
「己丑の大火」前夜の町と人々を通して描く、知恵と勇気の感動ストーリー。(『初詣で 照降町四季(一)(文春文庫)』Amazonの内容紹介より)
数々の人気シリーズをもつ、文庫書き下ろし時代小説の巨匠の著者ですが、女性職人を主人公にしたシリーズは今回がお初だそうです。
そういえば、著者の短編に「寒紅おゆう」という市井人情小説がありました(『花ふぶき―時代小説傑作選』収録)。痛快なチャンバラがなくてもキュンと胸に響く作品でした。
今回は全四巻で、四カ月連続刊行ということで、「月刊佐伯」という感じで、毎月新作が楽しめます。
シリーズのヤマ場の一つは、文政十二年(1829)三月に発生した江戸の大火、「己丑(きちゅう)の大火」に置かれているようです。
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『初詣で 照降町四季(一)』(佐伯泰英・文春文庫)
『花ふぶき―時代小説傑作選』(結城信孝編・時代小説文庫)