『風神雷神 (上・下)』|柳広司|講談社文庫
2021年3月11日から3月20日の間に、文庫で刊行される時代小説の新刊情報リスト「2021年3月中旬の新刊(文庫)」を掲載しました。
今回は、柳広司さんの長編小説、『風神雷神 (上・下)』(講談社文庫)を取り上げてみました。
著者は、『ジョーカー・ゲーム』などで人気のミステリー作家で、近年は『太平洋食堂』や『アンブレイカブル』など、明治から太平洋戦争前の近代を舞台にした歴史小説も手掛けられています。
評判の扇屋「俵屋」の後継ぎとして大旦那の養子となった伊年は、秀吉が開催した醍醐の花見で見た屏風絵や、出雲阿国の舞台、また南蛮貿易で輸入された数々の品から意匠を貪る。
彼が絵付けをする「俵屋」の扇は日に日に評判を増していた。伊年が平家納経の修繕を頼まれ描いた表紙絵は、書の天才、本阿弥光悦の興味を惹く出来となる。
伊年は嵯峨野で出版・印刷事業を始めた幼馴染みの角倉与一より、光悦が版下文字を書く日本語書物の下絵を描かないかと持ちかけられる。その料紙を手配するのは、これまた幼馴染みの紙屋宗二。かくして本朝の美と叡智の粋を結集した「嵯峨本」が完成した。
次に、伊年が下絵を描き、光悦が書をしたためた「鶴下絵三十六歌仙和歌巻」が完成。京の知識人はもちろん、伊年自身もその出来に驚嘆し、涙を流す。
その後光悦に鷹峯へ共に移住しないか問われた伊年は、嘗て観た阿国の舞台や来し方を脳裏に浮かべ、誘いを断り、俵屋を継ぐ決意をした。(『風神雷神 (上)(講談社文庫)』Amazonの内容紹介より)
本書では、表紙装画にも使われている「風神雷神図屏風」で人気を集める琳派を代表する絵師、俵屋宗達の生涯を描く長編歴史時代小説です。
宗達は謎の多い絵師です。
気鋭のミステリー作家が宗達の謎に迫り、その生涯を明らかにしていくのか、楽しみが尽きない作品です。
宗達を描いた歴史時代小説では、原田マハさんの『風神雷神 Juppiter, Aeolus』が頭に浮かびます。読み比べて、風神雷神の作者が生きた時代に浸りたいと思います。
■Amazon.co.jp
『風神雷神 (上)』(柳広司・講談社文庫)
『風神雷神 (下)』(柳広司・講談社文庫)
『ジョーカー・ゲーム』(柳広司・角川文庫)
『太平洋食堂』(柳広司・小学館)
『アンブレイカブル』(柳広司・KADOKAWA)
『風神雷神 Juppiter,Aeolus (上)』(原田マハ・PHP研究所)