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類まれな商才をもつ大坂商人・一夜が、剣の家・柳生を守る

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『勘定侍 柳生真剣勝負(三) 画策』|上田秀人|小学館文庫

勘定侍 柳生真剣勝負(三) 画策上田秀人さんの長編文庫書き下ろし時代小説、『勘定侍 柳生真剣勝負(三) 画策・下』(小学館文庫)を入手しました。

大坂一といわれる唐物問屋淡海屋七右衛門の孫で、柳生家に召し出された勘定侍、一夜(かずや)の痛快な活躍を描く文庫書き下ろしシリーズの第3弾です。

一夜は七右衛門の娘と将軍家剣術指南役で初代惣目付の柳生但馬守宗矩の間に生まれました。しかし、宗矩は、旗本から大名に出世して、家の勘定方を強化する必要に迫られるまで、一度も一夜に会いに来ませんでした。

大坂商人から柳生家の勘定方となった淡海一夜。当主の宗矩から百石を毟り取り、江戸屋敷で暮らしはじめたのはいいが、ずさんな帳面を渋々改めているなか、伊賀忍の佐夜を女中として送り込まれ、さらには勘定方の差配まで任される始末。そのうえ、温かい飯をろくに食べる間もなく、柳生家出入りの大店と商談しなければならないのだ。一方、老中の堀田加賀守は妬心を剥き出しにし、柳生の国元を的にする。他方、一夜の祖父・七右衛門は、孫を取り戻すべく、柳生家を脅かす秘策を練る。三代将軍・家光も底意を露わにし、一夜と柳生家が危機に陥り……。修羅場の第三弾!

(本書カバー裏紹介より)

一夜は、柳生家の江戸屋敷で、勘定方として、新しい生活を始めました。
勘定方に保管されていた帳面を見て、不正はないものの、ずさんで、足し算引き算の間違いなど日常茶飯事で、検算するだけでもかなり手間がかかりました。

毎年数百両の支出超過に陥っていて、二千両を超える借財がありました。
勘定方の体制と整え、出入りの商人を総入れ替えをしなければならなくなりました。

仕事が多忙で家のことに手が回らない一夜は、柳生家の門番で伊賀忍び素我部一新から、妹、佐夜を女中として雇ってほしいと相談があり、受け入れました。

 佐夜を送り出した翌日、挨拶だと米を一斗手土産に一夜が素我部一新の長屋を訪れたときに、釘を刺された。
「寝込みは襲わんといてや」
「……なんでわかった」
 今さらとぼける意味はない。素直に素我部一新が問うと、
「新町の大夫と同じ目をしてたわ。男を獲物と考えている女の目を」

(『勘定侍 柳生真剣勝負(三) 画策』P.91より)

本シリーズの面白さの一つは、一夜の二十二歳の若者とは思えない、人間通ぶりです。老練さといってもいいような、世間知をともなった冷徹な洞察力にあります。

江戸城お出入り、御三家御用達の江戸商人・駿河屋総衛門からは、その機転と度胸は柳生家にはもったいない、「今すぐ、この駿河屋を任せても大丈夫な器量」と高く買われる一夜。剣ではなく、言葉と算盤で相手を打ち負かすところが何とも痛快です。

勘定侍 柳生真剣勝負(三) 画策

上田秀人
小学館 小学館文庫
2021年2月10日初版第一刷

カバーイラスト:西のぼる
カバーデザイン:鈴木俊文(ムシカゴグラフィクス)

●目次
第一章 対決の形
第二章 商人の肚
第三章 各々の動き
第四章 江ノ島合戦
第五章 名もなき忍
第六章 血と想い

本文289ページ

文庫書き下ろし。

■Amazon.co.jp

『勘定侍 柳生真剣勝負(一) 召喚』(上田秀人・小学館文庫)(第1弾)
『勘定侍 柳生真剣勝負(二) 始動』(上田秀人・小学館文庫)(第2弾)
『勘定侍 柳生真剣勝負(三) 画策』(上田秀人・小学館文庫)(第3弾)

上田秀人|時代小説リスト
上田秀人|うえだひでと|時代小説・作家 1959年大阪府生まれ。大阪歯科大学卒。 1997年、「身代わり吉右衛門」で、小説CLUB新人賞佳作受賞。 2009年、2014年、「奥右筆秘帳」シリーズで、『この時代小説がすごい!』文庫書き下ろし第...