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滅びゆく越前朝倉家に殉じる、仁の将・山崎吉家の生涯を描く

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『酔象の流儀 朝倉盛衰記』|赤神諒|講談社文庫

酔象の流儀 朝倉盛衰記赤神諒(あかがみりょう)さんの歴史時代小説、『酔象の流儀 朝倉盛衰記』(講談社文庫)を入手しました。

越前朝倉家が登場する歴史時代小説は多くありますが、その多くは織田信長によって滅ぼされる引き立て役のような存在として描いて、朝倉家にスポットを当てた作品は少ないです。

本書は、朝倉家の家臣・山崎吉家を主人公に描いた歴史時代小説です。

英傑・朝倉宗滴が没すると、越前の名門朝倉家の家勢は傾き始めた。後事を託された「宗滴五将」の筆頭「仁の将」山崎吉家は、押し寄せる織田勢に対抗するべく当主・義景に国を守るための秘策を何度も献言するが……。朝倉家臣団の離反、謀略、裏切りのなかで孤軍奮闘する吉家の姿が胸を打つ、本格歴史小説。

(カバー裏面の説明文より)

享禄四年(1531年)晩秋、朝倉家は隣国加賀の本願寺勢の弱体化させるべく、加賀北部まで侵攻しながら、加賀・能登の友軍が戦下手によって、敗北を喫してしまいました。

朝倉軍を率いる総大将の朝倉宗滴は、負け戦の壮絶な撤退戦から生きて戻ってきた別動隊を率いた山崎吉家と出逢いました。しかしながら、十四歳の若者吉家は、凄惨なる戦場を目の当たりにして心が壊れ、言葉を失ってしまいました。

責任を感じた宗滴は、吉家を手元に預かり、わが子ののように接します。その後、仏門修行を経て周りの民とも打ち解け、吉家はついに言葉を取り戻す。

「山崎吉家よ。お前はこれより、朝倉家を守る酔象たれ」
 涙声の宗滴に向かい、吉家は言葉なく何度もうなずいた。今、喋れぬのは涙のせいだ、
 
(『酔象の流儀 朝倉盛衰記』P.94より)

吉家はずんぐりした大柄な力持ちで、親しき者たちは将棋の駒にちなんで「酔象」と呼ばれていました。老人のように動作がのろく、しゃべり口調もゆっくりで、ほろ酔い加減で巨躯がふらふら歩く姿に似ていることからつけられたあだ名だとも。

やがて朝倉宗滴は陣中で倒れると、後事を吉家に託します……。

本書では、今までよく知らなかった朝倉家の内部の話が詳しく描かれていて、次第に朝倉家への理解が深まっていきます。

滅びゆく名門朝倉家の崩壊のプロセスと、その中で孤軍奮闘する吉家の姿に、戦国時代が活写されています。

酔象の流儀 朝倉盛衰記

赤神諒
講談社 講談社文庫
2020年12月15日第1刷発行

カバー装画:こより
カバーデザイン:芦澤泰偉

●目次
序章 仏顔の将
第一章 越前、平らかなり
第二章 酔象の夢
第三章 宗滴を継ぐ者たち
第四章 幻の天下
第五章 岐路
第六章 金ケ崎崩れ
第七章 乗り打ち
第八章 帰陣
第九章 舞えや酔象、仏のごとく
第十章 名門朝倉家の棋譜
終章 盛源寺
解説 藤岡陽子

本文385ページ

単行本『酔象の流儀 朝倉盛衰記』(講談社・2018年12月刊)を加筆・修正したもの。

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『酔象の流儀 朝倉盛衰記』(赤神諒・講談社文庫)

赤神諒|時代小説ガイド
赤神諒|あかがみりょう(赤神諒)|時代小説・作家 1972年京都市生まれ。同志社大学文学部卒。 法学博士、上智大学法科大学院教授。弁護士。 2017年、「丹生島城の聖将」(単行本時のタイトル『大友の聖将(ヘラクレス)』)で第12回小説現代長...