『一色町雪花 九頭竜覚山 浮世綴(五)』|荒崎一海|講談社文庫
荒崎一海(あらさきかずみ)さんの時代小説書き下ろしシリーズ、『一色町雪花 九頭竜覚山 浮世綴(五)』(講談社文庫)を入手しました。
深川一の売れっ子芸者米吉(よね)に押しかけられ、押したおされた学問一筋の兵学者・九頭竜覚山(くずりゅうかくざん)を主人公にした、捕物小説シリーズの第5弾です。
第1巻「門前仲町」、第2巻「蓬莱橋雨景」、第3巻「寺町哀感」、第4巻「小名木川」と、物語の舞台となる深川ゆかりの地名がタイトルに付けられています。
今回の「深川一色町」は、永代橋と富岡八幡宮の間に位置し、油堀の千鳥橋から富岡橋の間の南岸に沿った町です。深川えんま堂(法乗院)が近くにあります。
師走の朝、一面の雪。深川一色町の河岸で娘が冷たくなっていた。一色小町と評判のみつだ。さらに、料理茶屋の女中頭が井戸端で首を絞め殺され、みつめあてに出茶屋に通っていた表店の若旦那二人が溺死体で見つかる。門前仲町の用心棒九頭竜覚山は、一連の事件を追うのだが――。江戸情緒事件簿、第五弾!
(カバー裏面の説明文より)
寛政九年(1797)十二月。江戸が一面の雪に覆われた朝、万年橋近くにある霊雲院の出茶屋につとめていた娘・おみつが雪に埋もれて亡くなっているのが発見されました。
覚山は、北町奉行所定町廻りの柴田喜平次から、不審な娘の死にざまを聞き、事件に興味を持ち始めます。
「……まずは、死骸のことから話そう。みつは十六歳。一色町裏通りの薪炭屋栄屋の長女で、弟と妹がある。父親の名は銀二郎、母親はとめ。みつの躰には疵はなかった。水月にも当て身の痕はなかったが、女は帯があるからなんともいえねえ。鼻と口をふさいで気を失われたのかもな。おめえさん、みょうだと思ねえかい」
覚山はこたえた。
「思いまする、なにゆえ、土蔵のあいだによこたえるといっためんどうなことを。川に流せば身投げにたばかることができたやもしれませぬ」
(『一色町雪花 九頭竜覚山 浮世綴(五)』P.13より)
その後、門前山本町の裏通りにある料理茶屋の女中が井戸端で殺されているのが見つかりました。
しかし、事件はこれだけでは終わりません。
品川沖を船頭がなくただよっている屋根船が見つかったと、覚山のもとに出入りしている若い船頭の松吉が注進に来ました。
並外れた洞察力で覚山は、事件の謎を解くことができるのでしょうか。
本書では、物語が師走二十日に始まり、正月を過ぎて事件が進展していきます。
それに合わせて、師走の江戸の風景や正月の若水や七草粥などの風習も描かれていて、江戸情緒が感じられます。
この年末年始にステイホームで読む本にピッタリかもしれません。
一色町雪花 九頭竜覚山 浮世綴(五)
荒崎一海
講談社 講談社文庫
2020年12月15日第1刷発行
カバー写真:PIXTA
カバーデザイン:片岡忠彦
●目次
第一章 看板娘
第二章 若旦那
第三章 逢瀬
第四章 男女の仲
第五章 不運
本文396ページ
文庫書き下ろし
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『一色町雪花 九頭竜覚山 浮世綴(五)』(荒崎一海・講談社文庫)
『門前仲町 九頭竜覚山 浮世綴(一)』(荒崎一海・講談社文庫)