『殉教者』|加賀乙彦|講談社文庫
2020年12月11日から12月20日の間に、文庫で刊行される時代小説の新刊情報リスト「2020年12月中旬の新刊(文庫)」を掲載しました。
今回は、加賀乙彦さんの長編歴史小説、『殉教者』(講談社文庫)を取り上げてみました。
1614年、2代将軍徳川秀忠がキリシタン禁教令を発布した。キリシタンへの迫害、拷問、殺戮が頻発し、岐部は殉教者の記録を集める。翌年、28歳の岐部はエスパニア人修道士と共に長崎から船出、40日の航海の後にマニラ港に着く。そこで入手した地図には、双六のように、マニラを振り出しに、マカオ、マラッカ、コーチン、ゴア、ポルトガルの要塞のあるホルムズ島、さらにペルシャ砂漠、シリア砂漠、遂にはエルサレムに到達する道筋がこまかく描かれていた。岐部は自らの信仰を強くすることと、イエスの苦難を追体験することを思い、胸を躍らせた。
(『殉教者(講談社文庫)』Amazonの内容紹介より)
本書は、キリシタン禁教下で、殉教した日本人キリスト教司祭・ペトロ岐部カスイの信仰に生きた苛酷な生涯を描いた作品です。
2代将軍徳川秀忠により、キリシタン禁教令を発布された翌年、岐部は長崎から船出して、5年の歳月をかけて、海路で1万4500キロ、徒歩で3万8000キロの旅の末にローマにたどり着きました。
そこで岐部は、4日間にわたる試験を受け合格、イエズス会への入会を許され、ローマとリスボンで2年間の修練を経て、帰国の許可を得た岐部は、キリシタン弾圧の荒れ狂う日本に向けて殉教の旅路につきました。
何故に、戻れば殺されることが必至の日本に向かうのでしょうか。
ペドロ岐部は、隠れキリシタンの村を描いた大河小説、帚木蓬生さんの『守教』にも登場して、気になる人物の一人でした。
著者は医学者、精神科医のかたわら、小説家としても活躍されています。(1929年生まれということなので、この作品が単行本で発表された2016年には85歳!)
本書のほかに、『高山右近』『ザビエルとその弟子』など、キリシタン殉教者を描いた歴史小説も発表されています。
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『殉教者』(加賀乙彦・講談社文庫)
『新装版 高山右近』(加賀乙彦・講談社文庫)
『守教(上)』(帚木蓬生・新潮文庫)